AMDのPLD事業を買収し意気軒高のLattice SemiconductorがFPGA参入で崖っぷちにプログラマブルロジック本紀(10)(3/3 ページ)

» 2026年05月07日 06時00分 公開
[大原雄介MONOist]
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FPGA事業に参入も、ドットコムバブル崩壊が直撃して赤字垂れ流し状態に

 この買収の結果としてLatticeが手にしたのがORCA(Optimized Reconfigurable Cell Array)シリーズのFPGAである。もともとはAT&Tが開発したもので、1993年のIEEE Compconで発表されている図3)。

図3 図3 ORCAの基本構造。中央にPLC(Programmable Logic Cell)、周囲にPIC(Programmable Interface Cell)が配される。PLCの中核にあるのがPFU(Programmable Function Unit)である[クリックで拡大] 出所:Lattice Semiconductor

 ちなみに論文ではXilinxのXC4000 FPGAと比較し、さまざまな回路がORCAだと大体XC4000の3分の2程度のセルで実現できるとしていた。商用製品は第2世代であるORCA 2から始まり、Latticeの買収時には最新のORCA 4もラインアップされていた(図4)。

図4 図4 2002年といえばXilinxならVirtex-II Pro(最大74K LC)を発表した年に当たる。回路規模的にはORCA 4で最上位のOR4E6がVirtex-IIのローエンド(XC2VP2)といい勝負、といったところか[クリックで拡大] 出所:Lattice Semiconductor

 これによってLatticeは、念願だったCPLDメーカーからCPLD+FPGAという総合PLDメーカーに脱皮した格好になる。余談になるが、LatticeではORCAシリーズをFPGAではなくFPSC(Field Programmable System Chip)と称していた。

 ……という風に書くといい話に思えるのだが、実際はここからが大変だった。そもそも先の表でも分かるように、Latticeの2001年の売上高は猛烈に下がった。これはドットコムバブルの崩壊によるものである。そもそもAgere SystemsがなぜFPGA部門を売却したかといえば、ドットコムバブル崩壊の赤字を少しでも埋めるためである。そしてLatticeは通信機器向けに売り上げが特化していたから、バブル崩壊の影響をやはりモロに受けることになった。2001〜2006年の同社の業績を示すと以下のようになる(表2)。

年度 2001 2002 2003 2004 2005 2006
売上高 295,326 229,126 209,662 225,832 211,060 245,459
純利益 -109,519 -175,235 -91,806 -51,979 -49,119 3,093
表2 2001〜2006年のLattice Semiconductorの売上高と純利益(単位:1000ドル)

 売り上げは復帰せず、それどころか赤字垂れ流しの状況に陥った。ちなみに2006年はそれでも辛うじて黒字になったが、翌2007年には2億3982万米ドルの赤字に転落している。もちろんTsui氏は手をこまねいていたわけではなく、富士通に生産を委託したり、低価格向けのECPシリーズという(従来だとCPLDに分類される)小容量製品ラインを開発したり、といろいろ手を打つものの事態は好転しなかった。それどころか、2004年には特定技術を利用した製品を中国に輸出したとして米国政府に訴えられ、56万米ドルの罰金を支払っている。

 そして2005年6月、同社は監査委員会による調査が完了するまで、会長兼CEOのTsui氏に加え、VP, FinanceのRodney Sloss氏の2人を休職扱いとすることを発表。同年8月、2人は解雇された。直接的な理由は、同社の取締役会が財務状況を誤って報告し、さらに自らに数千株のストックオプションを割り当てたことに対して株主代表訴訟が提起されたことに起因するが、5年間に渡って低迷した同社の業績を考えると止む無しともいえる。

 後任にはTsui氏の下でCFOやPresidentを務めたStephen Skaggs氏が就き、2008年までCEOを務めた。この間にLatticeはリストラを敢行するが、それでも財務状況は改善しないままだった。(次回に続く)

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