日立製作所は、トヨタ自動車東日本の岩手工場に次世代ソリューション群「HMAX Industry」のEMSである「EMilia」を納入したと発表した。試運転調整時においてインバランス率1%前後という極めて高精度な運用を達成したという。
日立製作所(以下、日立)は2026年4月20日、トヨタ自動車の生産子会社であるトヨタ自動車東日本の岩手工場(岩手県金ケ崎町)に次世代ソリューション群「HMAX Industry」のEMS(エネルギーマネジメントシステム)である「EMilia(エミリア)」を納入し、同月から稼働を開始したと発表した。試運転調整時において、前日時点で計画した受電電力量計画値に対する実績値の誤差に当たるインバランス率で1%前後という極めて高精度な運用を達成したとする。
今回のEMiliaの納入では、日立がトヨタ自動車東日本と共同で自動車工場向けにフィジカルAI(人工知能)技術を実装する形で機能を拡張している。これにより、高精度な電力需要予測とリアルタイムな需給コントロールが可能になるとした。トヨタ自動車東日本が供給を受ける、水力や風力、太陽光などのオフサイト/オンサイトの再生可能エネルギーに基づく電力を活用するための電力需給バランス最適化や、事業の安定運営、脱炭素社会への貢献などにつなげられているという。
トヨタ自動車東日本は2025年4月1日、岩手工場において、地域の脱炭素化と防災性向上を目的とした「金ケ崎レジリエンスグリッド」の運用を開始した。金ケ崎レジリエンスグリッドでは、平常時は再生可能エネルギーの地産地消を進め、災害などの停電時には自立運転へ移行し、工場や地域の広域防災拠点へ電力を供給する狙いがある。
しかし、この構想の実現には運用上の課題があった。天候で変動する再エネの利用を拡大すると需給バランスが崩れやすくなる一方で、日々の需給調整を行いながらも、災害に備えた蓄電池残量は常に確保しておかなければならない。この「需給バランスの調整」と「非常時電源の確保」という複雑な制約を同時に満たすには、先を見越した高度な予測制御が不可欠になる。そこで、自社の再エネ利用拡大と地域社会の強靭(きょうじん)化の両立を目的とする金ケ崎レジリエンスグリッドの中核システムとして、フィジカルAIを実装したEMiliaが導入された。
EMiliaは、現実世界を認識/理解し、自律的に判断して実際に行動する能力を備えたAIであるフィジカルAIに基づく高精度な需要予測を基盤技術としている。気温などの複雑な相関関係をAIが自律的に学習し、物理モデル演算による太陽光発電量の予測と組み合わせることで、精緻な電力需要を予測できる。また、事前の計画値と実績のギャップをリアルタイムに検知し、CGS(Co-generation System)や蓄電池を人手を介さずに自動補正する機能を備えている。その際には、CGSの出力上下限値や蓄電池の充放電特性といった設備固有の制約条件を考慮し、過度な負荷を掛けない安全な稼働範囲を厳格に守って制御を行う。
これらEMiliaの基盤技術に加えて、今回は自動車工場向けの拡張機能として「緻密な生産計画情報を用いた需要予測」と「現場固有の運用ルールと設備仕様を組み込んだ計画/制御の最適化」をトヨタ自動車東日本との協創により実装した。
緻密な生産計画情報を用いた需要予測では、トヨタ自動車東日本の緻密な生産計画情報や過去の稼働実績データをAIの予測モデルへ新たに組み込むことで、工場特有のわずかな稼働変動も逃さず捉えるカスタマイズを施した。また、現場固有の運用ルールと設備仕様を組み込んだ計画/制御の最適化では、計画段階では「規定時間内のCO2フリー電力の上限値以内に買電を収める」といった複雑な運用ルールを自動計算し、CGSや蓄電池の最適な出力配分を立案しつつ、リアルタイム制御では基盤技術の安全な自律制御を土台としながらCGSの出力変化速度など現場設備固有の制約を新たに組み込んでいる。これにより、現場の特性に合わせたより強固な安全性の向上に寄与している。
これらの拡張機能により、試運転調整時においてインバランス率1%前後という極めて高精度な運用を達成したという。
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