日産の2025年度上期の世界生産台数は、前年同期比5.3%減の144万2799台と2年連続で前年実績を下回った。とりわけ厳しいのが国内生産で、同12.9%減の26万7340台と2年連続のマイナス。輸出車両の「パトロール/アルマーダ」は好調だったが、国内市場向けの「ノート」「セレナ」「エクストレイル」など主力車種がそろって台数を落とした他、EV「アリア」も低迷。輸出も北米や欧州向けが大幅マイナスとなり、同14.1%減の15万6661台と2年連続で減少した。
海外生産は、前年同期比3.3%減の117万5459台と4年連続の前年割れだった。主要市場の北米は、「キックス」が増えたメキシコは同0.5%増の34万3621台と何とかプラスを確保し、3年連続の増加。ただ、米国では、新型「ムラーノ」は増加したが、EV「リーフ」とピックアップトラック「タイタン」の生産終了などにより、同9.0%減の23万1477台と落ち込み2年連続のマイナス。英国も「キャシュカイ」の減少により同10.6%減の12万7346台と2年連続で減少した。一方、中国は、市場のEVシフトやそれに伴う競争激化などは続いているが、新型EV「N7」の投入により、同3.0%増の32万1821台と5年ぶりに前年実績を上回った。
足元でも特に海外で回復の兆しを見せている。9月単月の世界生産台数は、前年同月比0.5%増の27万933台と2カ月連続で前年実績を上回った。このうち海外生産は、同5.6%増の22万2957台と2カ月連続のプラス。国別では、米国がムラーノや「エクストレイル/ローグ」などが増加し、同11.3%増の4万6144台と2カ月連続で増加した。メキシコも「セントラ」やキックスが伸長し、同4.3%増の6万169台と3カ月連続のプラス。N7が好調の中国も同11.3%増の6万4551台と4カ月連続で増加した。英国も第3世代「eパワー」を搭載したキャシュカイが増加し、同7.4%増の2万7723台と2カ月連続で増加した。
海外で回復の動きが見られる一方で、国内は低迷が続く。9月単月の国内生産台数は前年同月比18.1%減の4万7976台と19カ月連続のマイナスだった。10月の国内販売では、ノートが同27.9%減、セレナが同24.1%減、エクストレイルに至っては同46.3%減と、主力モデルが軒並み低迷。さらに輸出では、米国の追加関税を踏まえ、北米向けでエクストレイル/ローグの現地生産を増やすとともに輸出を減らすなどの調整を実施。北米向け輸出は同62.1%減の6486台と大きく落ち込んだ。パトロール/アルマーダは好調だが、北米の減少が響き、輸出トータルは同33.6%減の2万5298台と3カ月ぶりのマイナスだった。
なお、日産もネクスペリアの半導体供給問題を受けて、11月10日から1週間程度、追浜工場(神奈川県横須賀市)と日産自動車九州(福岡県苅田町)で減産調整を実施すると明らかにしている。また、2025年9月に発生した米国アルミリサイクル大手のノベリスの工場火災について、米国生産などへの影響が出るとして2025年度下期の減益要因に織り込んだ。経営危機から徐々に反転への兆しが見え始めた日産だが、ここにきて新たな懸念材料が目立ち始めた格好となっている。
2025年度年上期で最も厳しい状況に置かれたのがマツダだ。世界生産台数は、前年同期比7.9%減の55万5040台と4年ぶりの前年割れとなった。中国は回復したものの、米国と欧州で販売が落ち込んだことで、メインの国内生産が伸び悩んだ他、米国の追加関税対策としてメキシコで生産する米国向け車両を減産したことが響いた。このうち国内生産は、同9.3%減の34万629台と2年連続のマイナスとなった。主力車種の「CX-5」は同9.2%増の15万3962台と増加したが、「マツダ3」「CX-70」「CX-90」などの落ち込み、「マツダ6」の生産終了などが影響を及ぼした。
好調だった海外生産も伸び悩み、前年同期比5.5%減の21万4411台と4年ぶりに減少へ転じた。「CX-50」の販売が好調な米国工場は同15.3%増の6万3164台と増加した他、中国も新型EVの「EZ-6/マツダ6e」「EZ-60」が純増となり、同34.1%増の4万3797台と大きく伸長し、5年ぶりに増加。ただ、メキシコが同国内と米国向けの「CX-30」や「マツダ3」を減産して同20.9%減の8万1667台と大きく落ち込んだ他、タイも「CX-3」や「マツダ2」が減少し、同28.8%減の2万5783台と低迷した。
厳しい状況が続いていたマツダもようやく回復の動きを見せ始めた。9月単月の世界生産台数は、前年同月比3.1%増の10万7536台と8カ月ぶりにプラスへ転じた。国内生産は、同5.1%増の6万8378台と2カ月連続で増加した。販売が堅調なCX-5が同29.7%増の2万7404台と増加し、欧州向けが伸長したCX-30は同34.7%増の6663台と大幅増を記録した。ただ、海外生産は、同0.2%減の3万9158台とわずかに届かず、5カ月連続のマイナスだった。中国はEZ-6/マツダ6eやEZ-60の純増などで同18.1%増の8065台と好調をキープ。米国もCX-50にHEVを追加したこともあり、同14.5%増の1万626台と2桁%増を記録した。一方、タイはオーストラリア向けCX-3の減産などにより同11.6%減の5228台と低迷が続く他、メキシコも米国向けCX-30やマツダ3の減少などで同11.5%減の1万5239台となった。このため北米トータルでも同2.4%減と減少した。
スバルの2025年度上期の世界生産台数は、前年同期比4.7%減の45万2645台と2年連続で前年実績を下回った。このうち国内生産は、同6.9%減の27万7083台と2年連続のマイナス。これは群馬製作所矢島工場(群馬県太田市)で工事を実施しており、一部の生産ラインを停止した影響が表れた。これに伴い輸出も同9.0%減の22万3256台と落ち込み、2年連続で減少した。唯一の海外拠点である米国生産も、同1.0%減の17万5562台と4年ぶりのマイナスだった。ただ、これについてスバルでは「おおむね計画通りの生産ができている」(広報部)としている。
生産ライン工事の影響は、足元でも大きく表れている。9月単月の世界生産台数は、前年同月比20.5%減の6万48615台と3カ月連続の前年割れだった。矢島工場で一部ラインを停止している国内生産は、同25.4%減の4万2152台と4カ月連続の減少。輸出も同51.2%減の2万5043台と大きく落ち込み、3カ月連続のマイナスとなった。加えて、海外生産では、一部の部品供給に制約が発生。同11.4%減の2万6463台と2カ月連続で減少した。9月の海外生産では8社で最大の減少率となった。
三菱自の2025年度上期の世界生産台数は、前年同期比6.4%減の41万4767台と3年連続で前年実績を下回った。国内/海外ともに低迷し、8社の順位ではスバルを下回り、最下位が定着しつつある。国内生産は、同8.7%減の20万7997台と2年連続で減少した。国内販売では、「デリカD:5」の販売は好調だったものの、人気の軽自動車「デリカミニ」や日産にOEM(相手先ブランドによる生産)供給する「ルークス」が新型車への切り替え前で伸び悩んだ他、日産向けOEMの軽EV「サクラ」が前年同月から約4割減少した。輸出も北米向けが低迷するなど、同12.6%減の10万1897台と3年ぶりにマイナスへ転じた。海外生産も同3.9%減の20万6770台と3年連続のマイナスだった。三菱自が得意とする東南アジア市場の低迷が響いており、中でも主力のタイが経済低迷やローン審査の厳格化などにより前年同期から約2割減少した。一方、インドネシアは、新型SUV「デスティネーター」の生産開始などにより同約25%増加したが、タイの落ち込みをカバーするまでには至っていない。
足元の状況も厳しい。9月単月の世界生産台数は、前年同月比21.8%減の6万6161台と3カ月連続のマイナスだった。9月における8社の世界生産では最大の落ち込みとなった。中でも国内生産は、同32.6%減の2万8504台と4カ月連続で減少。フルモデルチェンジを控えたデリカミニや、日産にOEM供給するデイズやサクラなどが減少した。輸出も北米向けが同約2割落ち込んだことが響き、同9.6%減の1万7595台と4カ月連続のマイナスだった。海外生産も、同11.0%減の3万7657台と3カ月連続で減少。インドネシアは回復が進んでいるものの、引き続きタイが落ち込んでいる。
厳しいタイの状況を受けて三菱自は2025年11月5日の決算発表に合わせて、タイの第3工場での車両生産を2027年半ばから休止すると発表した。タイ事業の構造改革の一環で、生産ラインを集約してタイ工場の稼働率を高める狙い。同社社長の加藤隆雄氏は「今のタイバーツの状況を考えると、他の目的で使用する」と説明し、第3工場は、車両生産の休止後に倉庫などとして活用する方針だ。
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