新車生産の厳しい環境続く、国内や米中で苦戦自動車メーカー生産動向(1/2 ページ)

2025年5月の日系自動車メーカーの生産は、前年割れが目立つメーカーが多く、8社の世界生産合計は4カ月ぶりに前年実績を下回った。国内生産が低迷した他、北米や中国もマイナスが相次いだ。中国での競争激化による販売低迷は依然として続いており、トランプ関税による影響も表面化し始めている。

» 2025年07月30日 09時00分 公開
[MONOist]

 2025年5月の日系自動車メーカーの生産は、前年割れが目立つメーカーが多く、8社の世界生産合計は4カ月ぶりに前年実績を下回った。国内生産が低迷した他、北米や中国もマイナスが相次いだ。中国での競争激化による販売低迷は依然として続いており、トランプ関税による影響も表面化し始めている。今後は各社が新型車の投入を予定するなどプラス材料がある一方で、米国の関税問題や、厳しい競争にさらされている中国市場、景気低迷が長引く東南アジアなど、日本の自動車業界にとって厳しい環境が続くことが予想される。

 5月の8社合計の世界生産は、前年同月比3.6%減の197万1394台と前年実績を下回った。前年超えだったのはトヨタ自動車、ダイハツ工業、SUBARU(スバル)、三菱自動車の3社にとどまった。国内生産の8社合計は、同2.0%減の60万4356台と5カ月ぶりに減少へ転じた。国内生産もダイハツ、スバル、三菱自が前年実績を上回った。

 海外生産の8社合計は、前年同月比4.3%減の136万7038台と2カ月連続で減少した。トヨタ、スバル、三菱自を除く5社が前年割れだった。地域別に見ると、北米は同3.7%減と3カ月ぶりのマイナスで、中国も同2.5%減と16カ月連続のマイナス。東南アジアもタイなどで相変わらず厳しい状況が続いている。

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2025年5月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 241,570 565,107 194,219 127,916 806,677
▲ 5.4 1.5 0.9 15.2 ▲ 0.7
ホンダ 49,348 236,910 143,319 49,477 286,258
▲ 3.5 ▲ 5.9 ▲ 3.0 ▲ 14.4 ▲ 5.5
スズキ 71,458 210,964 - - 282,422
▲ 14.1 ▲ 0.1 - - ▲ 4.1
日産 40,892 188,753 98,258 48,764 229,645
▲ 16.8 ▲ 16.4 ▲ 10.5 ▲ 23.6 ▲ 16.5
ダイハツ 63,476 60,588 - - 124,064
64.6 ▲ 16.2 - - 11.9
マツダ 50,620 34,976 22,763 7,289 85,596
▲ 8.8 ▲ 11.7 ▲ 18.0 34.8 ▲ 10.0
スバル 47,780 33,602 33,602 - 81,382
3.0 1.3 1.3 - 2.3
三菱 39,212 36,138 - - 75,350
4.8 3.9 - - 4.4
合計 604,356 1,367,038 492,161 233,446 1,971,394
▲ 2.0 ▲ 4.3 ▲ 3.7 ▲ 2.5 ▲ 3.6
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、%
※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

トヨタ自動車

 メーカー別に見ると、トヨタの5月のグローバル生産台数は、前年同月比0.7%減の80万6677台と5カ月ぶりのマイナスとなった。ただ、海外販売およびグローバル販売は5月として過去最高を更新した。

 海外は生産も堅調で、前年同月比1.5%増の56万5107台と4カ月連続で前年実績を上回った。地域別で見ると、主要市場の北米は、同0.9%増と微増で3カ月連続のプラス。米国生産は同1.8%減と伸び悩んだが、メキシコが同15.7%増と好調だった。車種別では「カムリ」や「RAV4」などがけん引した。中国も、依然として電気自動車(EV)の販売競争が続いているが、政府補助金に連動した販促策や新型EV「bZ3X」の受注好調などで、同15.2%増と5カ月連続で前年を上回った。

 中国以外のアジアは、ローン審査の厳格化などにより依然として市場は厳しいものの、ハイブリッド車(HEV)や輸出の堅調さの他、市場低迷が一巡したとこもあり、主力拠点のタイが前年同月比2.0%増、インドネシアも同4.1%増とプラスを確保した。インドも「イノーバハイクロス」や「アーバンクルーザーハイランダー」などの好調で同2.7%増となり、中国を含むアジアトータルでは同7.4%増と4カ月連続で前年実績を上回った。欧州は、各国で稼働日が少なかった影響により同17.1%減と大きく落ち込み、4カ月連続のマイナスだった。

 一方、国内生産は、前年同月比5.4%減の24万1570台と5カ月ぶりに前年実績を下回った。前年に「プリウス」の後席ドアハンドル電気式スイッチの不具合などで稼働停止していた反動の増加要因はあったものの、稼働日が少ないことが響いた。ただ、輸出は同10.6%増と5カ月連続で増加した。

ホンダ

 ホンダの5月のグローバル生産台数は、前年同月比5.5%減の28万6258台と10カ月連続のマイナスだった。このうち海外生産は、同5.9%減の23万6910台と10カ月連続で減少した。中でも中国は、EV市場の競争激化により販売が低迷していることを受けて、複数工場の閉鎖など生産調整を実施しており、同14.4%減と大きく減らし、10カ月連続で前年実績を下回った。その結果、アジアトータルも同12.5%減と13カ月連続で減少した。主要市場の北米も同3.0%減と3カ月ぶりのマイナスとなった。

 国内生産も伸び悩んでおり、前年同月比3.5%減の4万9348台と、3カ月連続で前年実績を下回った。前年に国内最量販の「N-BOX」が新型車効果で増産していた他、半導体の供給改善などで高水準の生産だった反動が表れた。6月の国内販売でもN-BOXが減少し、「ヴェゼル」「フィット」「ZR-V」など主力モデルが2桁パーセント減と大きく落ち込んだ。ただ、輸出は2月から埼玉製作所(埼玉県寄居町)で米国向けシビック5ドアHEVの生産を開始したため、同64.1%増と2カ月連続で増加した。

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