入れ子金型は、図17に示すようにダイブロックに直接キャビティを形彫りしないで、入れ子に形彫りを施して、これを主型にはめ込んで金型を組み立てる。
金型材料は、溶湯に直接触れる箇所の入れ子、中子、湯道などにダイス鋼を用い、主型などは炭素鋼を用いて金型費用を安価にすることができる。また、金型を分割することによって分担製作が可能で、熱処理歪を少なくできるなどの利点があり、現在用いられているダイカストの金型のほとんどはこの形式である。
図18に入れ子金型による製品の一例を示す。
汎用の2サイクルエンジンで、ゴーカートや発電機、芝刈用発動機などに用いられる。製品重量を軽減するため、リブやボスによる強度の補強が見事に行われているのが理解できよう。
ユニット金型は、共通主型金型と狭義のユニット金型に分かれる。
共通主型金型は、標準の主型を作っておき、それに合うように入れ子を設計するか、あるいは製品の種類別に標準的な主型を製作しておく。また、入れ子を交換しても精度を出すために、主型と入れ子それぞれ独立に精度を出しておく。図23は、ビン型金型の一例を示したものだが、入れ子を交換した場合に押出ビンの穴の位置が変わるので、可動型の裏を抜いてあり、入れ子のビンの座を受けるために可動入れ子の底に1枚板を敷いてある。金型の製作費は安価だが、鋳造入れ子を入れ替るのに工数がかかる。
狭義のユニット金型は、主型に挿入する入れ子部分は、それだけでほぼ金型の機能を持つユニットとし、主型を機械に取り付けたまま、簡単に他のユニットに替えられるようにした金型で、交換時間が少なくて済む。
ユニット金型の製品部は、製品部の入れ子のみで小さな合せビンがあり、これに押出し板のみ付いたものをそのまま横から入れ込んで、ツメで止める。図20にユニット金型を示す。
図25は、ダイカスト型の組み付けの様子を上から見たものである。金型の大きさに比べ、他の型締装置など非常に大掛かりな組み付け作業が必要である。
次回は、ダイカスト工程をさらに深掘りして解説する。(次回に続く)
武藤 一夫(むとう かずお) 武藤技術研究所 代表取締役社長 博士(工学)
1982年以来、職業能力開発総合大(旧訓練大学校)で約29年、静岡理工科大学に4年、豊橋技術科学大学に2年、八戸工業大学大学に8年、合計43年間大学教員を務める。2018年に株式会社武藤技術研究所を起業し、同社の代表取締役社長に就任。自動車技術会フェロー。
トヨタ自動車をはじめ多くの企業での招待講演や、日刊工業新聞社主催セミナー講演などに登壇。マツダ系のティア1サプライヤーをはじめ多くの企業でのコンサルなどにも従事。AE(アコースティック・エミッション)センシングとそのセンサー開発などにも携わる。著書は機械加工、計測、メカトロ、金型設計、加工、CAD/CAE/CAM/CAT/Network,デジタルマニュファクチャリング、辞書など32冊にわたる。学術論文58件、専門雑誌への記事掲載200件以上。技能審議会委員、検定委員、自動車技術会編集委員などを歴任。
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