第一工業製薬は、リチウムイオン二次電池向けの水系複合接着剤「エレクセルCR」シリーズの新たな製造設備を、三重県の四日市工場霞地区に導入。この設備投資により、製造能力と安定供給体制を一層強化する。
第一工業製薬は2025年7月29日、リチウムイオン二次電池向けの水系複合接着剤「エレクセルCR」シリーズについて、三重県の四日市工場霞地区に新たな製造設備を導入すると発表した。投資額は約30億円で、稼働開始は2027年度を予定している。
近年は、リチウムイオン二次電池の負極材料で広く使われる黒鉛に、シリコン系材料を添加することで高容量を確保している。しかし、シリコン系負極材料は充放電に伴う膨張、収縮により、性能が低下するという課題がある。
エレクセルCRシリーズは、この課題を解決する接着剤だ。黒鉛を使用しない100%シリコン系活物質を材料とする電極でも構造を安定化させ、電極寿命の延長に貢献する。既に大手電池メーカーへの採用実績があり、高容量、長寿命を求める次世代電池への展開が進んでいる。同社は今後、EVや小型電子機器向けなど、成長が見込まれる分野に向けて事業拡大を進める。
第一工業製薬は、2025年5月に滋賀工場の増強投資を実施しており、今回の四日市工場への設備投資により、製造能力と安定供給体制を一層強化する。また、将来的な需要拡大に備えて、さらなる追加投資も視野に入れている。
同社は2025年4月に開始した中期経営計画「SMART 2030」において、注力分野の1つ「環境・エネルギー分野」の2030年の目標を、売上高1000億円、営業利益100億円と設定している。特にエレクセルCRシリーズを含めたリチウムイオン二次電池の負極用水系複合接着剤関連事業で、目標の3分の1を担うべく成長を目指す。
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