第一工業製薬は、戦略的資源として位置付けられるリチウムイオン二次電池の需要増に対応するため、滋賀工場で負極用水系複合接着剤「エレクセルCR シリーズ」の生産能力を増強した。
第一工業製薬は2025年5月14日、戦略的資源として位置付けられるリチウムイオン二次電池の需要増に対応するため、滋賀工場(滋賀県東近江市)で負極用水系複合接着剤(バインダー)「エレクセルCR シリーズ」の生産能力を増強したと発表した。
エレクセルCR シリーズは、リチウムイオン二次電池の高容量化および長寿命化を可能にする負極用水系複合接着剤で、シリコン系負極材料の充放電時の膨張/収縮に伴う電池性能の低下という課題を克服する。
同材料がシリコン系活物質100%配合系に適用可能で良好な性能も有すことから、電池メーカーなどから高く評価され、採用に至っている。
この採用により需要拡大が見込まれることから、第一工業製薬は生産能力を高めるため、設備投資を進めてきた。今回、滋賀工場で中量生産設備が完成し、2025年5月に稼働を開始する。今後も、段階的に約30億円の投資を行い、さらなる事業展開に向け、供給体制の構築を進めていく予定だ。
リチウムイオン二次電池の負極材料は黒鉛が主流だが、近年では高容量を追求するために、黒鉛にシリコン系材料(SiO、SiC、Si)が添加されている。シリコン系材料は、充電時に膨張し放電時に収縮するため、電極構造が破壊され、電池の劣化が生じるという課題がある。
昨今では膨張/収縮を制御し、電池の寿命を延ばす接着剤の要求が高まっている。エレクセルCR シリーズは、シリコン系材料100%配合系でも電極構造が安定し長寿命化を図ることが可能で、負極容量をさらに向上できる可能性がある。さらに、樹脂の弾性率や強度のコントロールが行われているため、汎用品では難しい負極材の膨張収縮に適応する性質を持ち、高い構造復元性を発揮する。同社では伸長が期待される小型機器や電気自動車(EV)分野での事業拡大を目指す。
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