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» 2022年01月07日 14時00分 公開

AIと近赤外線センサー活用で検査速度を約6倍に、技能継承も容易化製造現場向けAI技術

HACARUSは2022年1月6日、化学品メーカーである第一工業製薬の製造工程において、近赤外線カメラによる撮影や人工知能によって従来比約6倍の検査速度を実現する検査技術を開発したと発表した。

[池谷翼,MONOist]

 HACARUSは2022年1月6日、化学品メーカーである第一工業製薬の製造工程において、近赤外線カメラによる撮影や人工知能(AI)によって従来比約6倍の検査速度を実現する検査技術を開発したと発表した。検査員のカンコツに依存していた検査作業を自動化することで、検査員の負荷軽減や技能継承の容易化につながる。

近赤外線の吸収/反射度合いで水分量判定

 CMCは製造工程で、使用用途に応じて水分含有量を適切に調整していく必要がある。ただ、水分含有量の測定は可視光による画像検査では難しい。そのため従来は、溶剤を用いた容積測定の他、ベテラン検査員らによる製品表面の目視検査、手で握った際の感触などで判定を行っていた。社内でDX(デジタルトランスフォーメーション)推進プロジェクトを展開する第一工業製薬は、この検査測定を改善すべきテーマとして取り上げて、解決に向けた取り組みを進めていた。

 今回発表した検査手法は、近赤外線カメラとHACARUSが開発した画像分析AIを組み合わせて行うものである。赤外線の吸収や反射の度合いはCMCに含まれる水分量によって異なったものとなる。そのため、適切な水分量の正常品に対して、水分過多であればカメラで撮影した画像が黒くなり、水分不足であれば白くなるという現象が起こる。これを利用して、適切な水分含有量を見極めることを可能にしたという。これらのデータを元に水分量の適切な状態やピーク値をグラフ化し、数値で表現することもできる。

検査の仕組み[クリックして拡大] 出所:HACARUS

 同手法は実証実験を経て、第一工業製薬で2021年11月から試験的に運用している。検査結果が客観的な数値で示されるため、共通の判断基準に基づく作業が可能になる。検査員ごとの作業のばらつきを低減することで、工程の標準化や供給量の安定化につながる。また、一部製品は測定値の指標も手触り判定も不完全で、トラブル停止の要因となっていたが、これらの発生をゼロに抑えることができたという。

水分量を客観的に測定できるように[クリックして拡大] 出所:HACARUS

 さらに、従来、1回の測定検査にかかる作業時間は30分程度だったが、自動化によって5分程度と作業時間を約84%削減することも可能になった。時間短縮によって作業点数も大幅に増加し、作業負荷の削減や効率的な生産、省力化につながる。

 さらに熟練技能を可視化することで、技術継承が容易になり、工程安定による製造量増加や、工場、製造ラインの拡張も見込めるという。人件費をはじめ、検査や検査員育成のコストが今後2〜3年で50%程度削減できるとしている。

検査過程のイメージ[クリックして拡大] 出所:HACARUS

 水分含有量の測定技術は、CMC以外の化学物質でも測定できると考えられるため、今後、他の素材への適用も進める方針だという。

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