大阪大学 産業科学研究所は、水に混ぜると無色透明で液ダレしない液体を作れるセルロースナノファイバーパウダー「TEMPO-CNF」を開発した。
大阪大学 産業科学研究所と第一工業製薬は2023年7月4日、大阪府吹田市で会見を開き、水に混ぜると無色透明で液ダレしない液体を作れるセルロースナノファイバー(CNF)パウダー「TEMPO-CNF」を開発したと発表した。
TEMPO-CNFの作成手順は、まず第一工業製薬が販売しているCNFペースト「レオクリスタ」をエタノールに投入する。レオクリスタ中の水分はエタノールで脱水および置換され、凝固が進むことを防ぐ目的で撹拌(かくはん)する。
次に、ゲル化しているレオクリスタを通常のろ紙を用いて回収する。なお、水に分散したレオクリスタをナノメンブレンフィルターで回収するためには数百ccをろ過するのに1日以上かかるが、揮発性に優れたエタノールでゲル化しているレオクリスタは、通常のろ紙により数百ccを数十秒でろ過および回収できる。
続いて、ろ紙により大部分の水分を取り除いたレオクリスタを風乾して溶媒のエタノールを蒸発させ、TEMPO-CNFが完成する。エタノールは沸点が低いのであっという間に蒸発が完了し、TEMPO-CNF内にはエタノールは残留しないという。TEMPO-CNFを開発するための実験では設定していた条件と粒径に対応する目的で風乾したレオクリスタを粉砕した。
こういった手順で作成できるTEMPO-CNFは増粘剤として機能し水に添加するとチキソトロピー性(通常時はゲル状だが撹拌すると液体になる機能)を備えた無色透明の液体を作れる。
TEMPO-CNFを添加した液体の透過率は88.1%で、増粘剤としてのスペックは、従来製品であるレオクリスタやレオクリスタを凍結乾燥して作られたCNFパウダーと遜色(そんしょく)ないという。さらに、凍結乾燥で作られたCNFパウダーは空気を多く含んでいるため静電気を帯びやすくスプーンで採取する際にくっついてしまうが、TEMPO-CNFは静電気を帯びにくいためスプーンにくっつきにくく扱いやすい。
大阪大学産業科学研究所 自然材料機能化研究分野 教授の能木雅也氏は「レオクリスタは水分を含有しているため、凍結乾燥で作られたCNFパウダーは空気を多く含んでいるため、同じCNFの容量でも体積と重さがTEMPO-CNFより大きい。具体的には、レオクリスタと比較して、同じCNFの容量でもTEMPO-CNFの重さは約50分の1で体積は約20分の1以下だ」と話す。
用途に関して、第一工業製薬では、化粧品や塗料/インキ、食品に少量添加するだけで増粘性を発揮する製品としてTEMPO-CNFを展開できると見込んでいるが、量産化する手法が確立していないため、その手法を構築するためにTEMPO-CNFの研究を進めていくという。
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