住友化学は、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」で、「ガラス透明ディスプレイ」やガラス繊維強化ポリプロピレン(PP)の自動車向けグレード「THERMOFIL HP」、ガラス繊維強化リサイクルPP「THERMOFIL CIRCLE」を披露した。
住友化学は、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)で、「ガラス透明ディスプレイ」やガラス繊維強化ポリプロピレン(PP)の自動車向けグレード「THERMOFIL HP」、ガラス繊維強化リサイクルPP「THERMOFIL CIRCLE」を披露した。
住友化学のグループ会社で韓国に本社を構える東友ファインケムが開発したガラス透明ディスプレイは、2枚のガラスの間にLED素子を実装し挟んだもので、国内では発売前だが韓国では既に販売されている。韓国では、同製品をバスに取り付けて広告動画を投影したり、建物内に配置し映像を流したりしている。
同製品は、高い透明性と対候性を有す他、最大5000nitの明るさを実現する。物理的な損傷に対して強い耐性も備えている。不燃性/難燃性でもあるため過電流/加熱により焼損も起きにくい。防塵/防水のため野外でも使える。安定性も高いため長期間にわたる利用でも黄変や白濁が発生せず、透明度を保てる。1枚当たりのサイズはおよそ幅500×高さ1000mmで、複数の同製品を連結することにより大型のディスプレイにすることもできる。
住友化学の説明員は「同製品に関しては現在、建築用カーテンウォール(後付け可能な外壁)タイプに加えて、強化ガラスの隅に穴を開け、ボルトと支持金物で建物の構造体に固定するドットポイントグレージング(DPG)工法に対応するタイプの開発も進めている。構造部分や外装材として建物に直接統合した太陽光発電システム(BIPV)タイプの開発も推進中だ。これらの製品では建築認証の取得も進めている。当社ではこういった製品により建物の外側が大型ディスプレイの役割を果たすことを目指している」と話す。
THERMOFILシリーズは、独自のコンパウンド技術によりPPとガラス繊維を組み合わせたプラスチックだ。既に国内外で販売されているガラス繊維含有率50%タイプのTHERMOFIL HPは、ガラス繊維含有率30%のポリアミド(PA)66やPA6といったエンジニアリングプラスチックより強度が高い。これらのエンジニアリングプラスチックより軽量でもある。
そのため欧州を中心に、繊維強化PAや繊維強化ポリブチレンテレフタレート(PBT)の代替材料として、自動車のアンダーフード部品や内外装などさまざまな部品に採用されている。
THERMOFIL CIRCLEは、リサイクラーが回収した部品から再生したPPをガラス繊維で強化したものだ。同製品はリサイクル材を原料としながらも従来のガラス繊維強化PPに求められる軽量性、高剛性、耐衝撃性を備えている。さらに、リサイクル材を使用しているため従来のガラス繊維強化PPと比較して、製造時に発生するCO2排出量を減らせる。
住友化学の説明員は「THERMOFIL CIRCLEは日本ではサンプルワーク中だが、環境配慮の取り組みに積極的な欧州では30年前から販売されており、給油ハウジング部品などに採用されてきた。繊維強化PAや繊維強化PBTからの材料代替としても採用され、部品の軽量化とカーボンフットプリントの削減に貢献している」と語った。
これらの他に、接炎部の温度急上昇を抑えるTHERMOFILの難燃グレード「THERMOFIL FR」やTHERMOFIL FRの低反りタイプも展示した。住友化学は両製品の自動車バッテリーケースでの採用を目指してサンプルワーク中だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.