IoTの活用事例を深堀りしていくと、高度な運営を実現している企業には、いくつかの共通点が見られるようです。典型的な特徴として下記が挙げられます
モノづくりを改善していくための工夫として、IoT機器が普及する前からすでに工場内でセンサーなどを積極的に使っていたようです。それらの測定機器が、IoTの普及によってさらに安価で効率的に測定できるようになったことで、測定点と頻度を増やして、さらにデータ活用を深めていきます。
「測定」をするには測る場所を決めて、そこにセンサーなどを設置をしなければなりません。従って、測る場所そのものを移動するという行為は従来のやり方からすると面倒な場合があります。
IoTは基本的に無線技術を採用していることが多いため、従来の有線回線を使ったセンサー機器よりも場所の移動をしやすいという特性があります。高度な運営をしている企業は、この特性を生かして故障が発生した箇所を集中的に測定したり、試験的な測定のための設置してみたり、ということを頻繁に行っているようです。
高頻度、24時間、複雑な工程など、人間の目視では測りきれない箇所の測定にも積極的に活用しています。そのような企業は生産能力を個数、サイクルタイム、停止時間、メンテナンス時間などの内訳で、秒単位で測定/集計することも日常的に行っています。
工場全体の測定機器の数も数百、数千箇所に及ぶこともあり、測定機器の保全作業も業務プロセスに組み込まれています。
IoTではない、つまりインターネットを利用した情報通信には対応していないものの、計器が点検手段として利用されているケースは数多くあります。購入した設備にあらかじめ備え付けられた、IoT未対応の計器を、後付けで後天的にIoT化することができるツールとその活用事例をLiLz(リルズ)のWebサイトから紹介します。
不二越は特殊鋼や工業炉などのマテリアル事業、工具/工作機械などのマシニング事業、ベアリング/油圧機器などの機能部品事業、エンジニアリング事業、そしてロボット事業などを展開。生産拠点は国内外にあり、ロボット部門は国内の富山事業所(富山県富山市)と中国工場があります。
製造現場では、点検専任者ではなく現場担当者が生産設備を点検していました。クレーンやコンプレッサー、トルクレンチなど始業時に点検する機器の種類が多く、時間もかかっていました。例え1回10分の点検業務だったとしても、1日複数回、それを1年続けると膨大な工数になります。紙の帳票に手書きで記載するので書き間違いも起こっていました。
そのような抜け漏れの改善を目的としてIoTカメラを用いた遠隔監視ソリューションを導入。安全性の面から高所の点検箇所などにIoTカメラを設置し、ダクト内の温度、冷媒圧力計、電流値などをリモート監視しています。点検時に現地に行かなくても設備の異常を早期に検出し、対応することが可能になりました。
今回は、IoTセンサーを活用した現場データの自動収集が、設備保全のDXにおける可動率/稼働率向上の重要なデータとなることを示しました。
具体例として温度、電力、水位の測定事例を挙げ、適切なセンサー選定とシンプルな設置、メンテナンス体制、データの一元管理とリアルタイム異常検知によって、現場負荷の軽減と経営判断の迅速化を両立できることを解説しました。
導入成功のポイントは、明確な運用目的に基づく機器選定、タブレット端末やクラウドを活用した直感的な入力/可視化環境、そして継続的な効果検証/改善サイクルの構築です。これらにより、経営層と現場双方がメリットを実感できる、本質的な設備保全DXの第一歩のヒントになれば幸いです。
八千代ソリューションズ
COO(Chief Operating Officer 最高執行責任者)
山口修平
クラウド設備管理システム「MENTENA」の事業責任者。大手建設コンサルティング会社にて、国土交通省が管理する社会インフラ事業のシステムエンジニアとして、河川など国土基盤のメンテナンスを支援するシステムのコンサルティングに従事。2019年に新規事業創出の部門にて、「MENTENA」の立ち上げに参画。2024年に事業承継により八千代ソリューションズを設立、人材不足/技術伝承/設備の老朽化などの社会課題に対してサービスを展開中。
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