ごみ処理施設の火災を防ぐリチウムイオン電池検知システム AIが位置を見える化人工知能ニュース(2/2 ページ)

» 2025年06月09日 08時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]
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製品化予定の3タイプとは?

 PFUの説明員は「多くのごみ処理施設では、回収してきたごみを土間に広げて、人が手でかきわけリチウムイオン電池を探す。リチウムイオン電池が無いと分かったら、それらのごみを破砕機に投入して破砕する。それでも、取り逃して発火する場合がある。新装置は破砕機前の工程に設置することで、リチウムイオン電池の位置を可視化し取り逃しを防げる。リチウムイオン電池を除去する従業員が1人必要だが、従来の方法と比べて求められる人手は少ないと考えている」と述べた。

 新システムでは「IXD100100DBF-F」「IXD100100BF-F」「IXD6040DBF」の3種類をラインアップする予定だ。

 IXD100100DBF-Fは、トンネル寸法が幅800×高さ500mm、X線照射方向は2方向、X線の透過能力は透過厚さが鉄で26mm(同社調べ)、通知方法はプロジェクターによるプロジェクションマッピングとモニターによる通知。耐環境性は防塵(ぼうじん)/防水に対応する。対象ごみは、製品プラ、容器包装プラ、燃やさないごみ、建築廃材だ。耐燃性重耐油コンベヤーベルトを採用しており、搬送量は5時間当たり72トン(t)となる。装置の寸法は長さ6655×幅1845×高さ3161mmで、重さは4.5t。プロジェクションマッピングや可視光カメラ撮影画像による検知物の位置表示機能を備えている。制御機器を冷却する機能も搭載している。消費電力は10kVA。

 IXD100100BF-Fは、トンネル寸法やX線の透過能力、通知方法、耐環境性、対象ごみ、コンベヤーベルトの材質、搭載している機能はIXD100100DBF-Fと同じだ。X線照射方向数は1方向で、装置の寸法は長さ6480×幅1750×高さ3161mm、重さは4.13tとなる。消費電力は9kVAだ。

 IXD6040DBFは、トンネル寸法が幅606×高さ420mmで、X線照射方向数は2方向となる。X線の透過能力は透過厚さが鉄で38mmだ(同社調べ)。通知方法はモニター通知で、防塵(ぼうじん)/防水には非対応。対象ごみは小型家電で、物流用途の樹脂コンベヤーベルトを採用している。装置寸法は長さ2397×幅1227×高さ1347mmで、重さは1tとなる。消費電力は1.2kVAだ。

 いずれの製品も、X線管圧は160kVで、AIエンジンとしてRaptor VISION BATTERYを備えており、このエンジンは外部通信(通信回線は顧客が用意)により自動アップデートされる。加えて、コンベヤーの速度は秒速250mmで、設置場所は雨/風の影響を受けない屋内と平地を想定している。電源は200V 50/60Hz(アース付き)となる。

 X線照射方向の数に関して、PFUの説明員は「X線照射方向が1方向のタイプは、天面から下部のごみにX線を照射して垂直画像を撮影する。2方向のタイプはこれに加えて側面からもX線を照射し水平画像を得て、AIエンジンにより水平/垂直の画像を、画像処理、前段/後段の認識処理を経て、統合認識してリチウムイオン電池を検出できる。そのため、1方向のタイプよりリチウムイオン電池の検出精度が高い。例えば、不燃ごみだと使用済みの金属製品が重なって垂直画像だけではリチウムイオン電池をセンシングできないことがある。水平画像ではこういったケースでもリチウムイオン電池を検出できるため、取り逃しをさらに減らせる」と話す。

X線照射装置で撮影された水平と垂直の画像からAIがリチウムイオン電池の位置を検出 X線照射装置で撮影された水平/垂直の画像からAIがリチウムイオン電池の位置を検出[クリックで拡大]
AIによる水平と垂直の画像の統合認識 AIによる水平と垂直の画像の統合認識[クリックで拡大] 出所:PFU

 なお、当面はX線照射方向が2方向のIXD100100DBF-FとIXD6040DBFの製品化を推進していく考えだ。「要望があればX線照射方向が1方向のIXD100100BF-Fを製品化していきたい」(PFUの説明員)。

 今後、PFUは2025年内の販売開始に向けてLiB検知システムの開発を進めていく。PFUの説明員は「2024年にLiB検知システムの試作機を開発し、自治体のごみ処理施設に導入し、実証実験を行ってきた。改良を重ねて製品化のめどが立ち、今回の展示会で初披露できた。ごみ処理施設を運営する多くの自治体や民間企業などから既に引き合いを得ている。今後はこういった自治体や企業とともに実証実験を実施し、さまざまな課題を抽出し改善する。また、米国のごみ処理施設からも関心が寄せられているので、海外展開も視野に入れている」と語った。

 なお、コンベヤーベルトの長さなどはカスタマイズに応じる他、プロジェクションマッピングや可視光カメラ撮影画像による検知物の位置表示機能をオプションとし、これらを外すことで装置の高さを下げられるようにする予定だ。「これらのオプションを外せば、高さは2mくらいに抑えらえるとみている。そうすれば高さ制限がある施設に導入しやすくなる」(PFUの説明員)。

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