しっかりと把握しておきたいODMに必要な費用ODMを活用した製品化で失敗しないためには(11)(3/3 ページ)

» 2025年05月15日 10時00分 公開
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印刷の版代

 取扱説明書やラベルなどの印刷物には版が必要であり、版代(印刷版代)が発生する。例えば、2色印刷の場合、2つの版が必要となる。版とは同じ内容を印刷するためのハンコのようなものだ。取扱説明書以外にも、製品にはさまざまな印刷物が同梱されており、それらにも同様に版が必要となる。カートンの表面に印刷があれば、これにも版代がかかる。そのため、部品ごとに版代を見積もってもらうのが望ましい。

生産に必要な費用

 製品の生産には、主に以下の準備が必要である。

  • QC工程表(組み立て工程を順番にフローチャートで記載した書類)
  • 作業標準書(上記の各工程の作業方法と作業順を記載した書類)
  • 治具(部品を正しく組み立てるために、部品を固定するもの)
  • 装置(電動ドライバー、測定器、溶接機など)

 新たな製品であれば、QC工程表と作業標準書は新規で作成する必要がある。治具と装置に関しては、ODMメーカーが所有しているものが使えない場合、治具は新しく作製し、装置は新たに購入しなければならない。よって生産には、量産立ち上げ費用(QC工程表、作業標準書などの書類作成費用)、治具費用、装置費用が必要となる。

今回のまとめ

 図3では「項目別にもらうとよい」「部品ごとにもらうとよい」などと記載しているが、実際には「検証費用」「金型費用」として一括見積もりされるケースが多い。ODMメーカーとしては、ビジネス的に費用の詳細は明かしたくないのだ。だたし、その場合は、設計過程でやむを得ず項目や部品などの追加による費用の増加があったとしても、見積もり金額から追加の費用請求はないことを、ODMメーカーと申し合わせておきたい。 (次回へ続く

ODMに必要な費用のまとめ 図3 ODMに必要な費用のまとめ[クリックで拡大]

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筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

著書

製品化 5つの壁の越え方: 自社オリジナル製品を作るための教科書中国工場トラブル回避術 原因の9割は日本人

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