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高熱伝導性/低熱膨張性と優れた加工性を有す金属-セラミックス複合材料材料技術

三菱マテリアルは、高熱伝導性/低熱膨張性を持ち、優れた加工性を有する金属-セラミックス複合材料を開発した。

» 2025年04月25日 08時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 三菱マテリアルは2025年4月23日、高熱伝導性/低熱膨張性を持ち、優れた加工性を有する金属-セラミックス複合材料を開発したと発表した。

開発した金属-セラミックス複合材料の特徴

 近年、電動車(xEV)などで使用される半導体の高出力化に伴い発熱量が増大している半導体製造装置でもより精密な温度コントロールが必要となっている。このため、半導体実装周辺部材や半導体製造装置用部品などには、従来に比べより高度な熱マネジメントが求められている。

 このようなニーズに応えるため、金属の高い熱伝導率とセラミックスの優れた機械特性を兼ね備えた金属-セラミックス複合材料が必要とされている。

 中でもアルミニウム(金属)と炭化ケイ素(セラミックス)から成るアルミニウムシリコンカーバイド(以下「Al-SiC」)は、高い熱伝導率と低い熱膨張係数が求められる部材に利用されている。

 しかし、その製造方法上の理由から一定以上の特性をバランス良く発揮させることが難しいという課題があった。

 Al-SiCの製造方法には、炭化ケイ素の多孔体に溶融したアルミニウムを含浸させる方法である含浸法や鋳造法などがある。含浸法では、炭化ケイ素骨格の中心部までアルミニウムを含浸させる必要があるため、製造可能な形状が薄板などに限定される。

 また、炭化ケイ素が主材であるため熱膨張係数は小さいものの、熱伝導率が不十分に加えて、加工性にも課題があった。鋳造法では、炭化ケイ素を複合材料中に均質に分散させることが難しく、熱膨張係数を十分に小さくするためには、多くの炭化ケイ素が必要となり熱伝導率が小さくなってしまう傾向があった。

 そこで当社は、これまで培ってきた粉末冶金技術を駆使し高度に材料組織を制御することで、高熱伝導性と低熱膨張性を両立させながら、優れた加工性も有する新しい金属-セラミックス複合材料を開発することに成功した。

新開発の金属-セラミックス複合材料の加工物の外観例 新開発の金属-セラミックス複合材料の加工物の外観例。左:円柱材の旋盤加工、右:板材の穴あけ加工[クリックで拡大] 出所:三菱マテリアル
新開発したAl-SiCの組織構造のイメージ図(従来品との比較) 新開発したAl-SiCの組織構造のイメージ図(従来品との比較)[クリックで拡大] 出所:三菱マテリアル

 この金属-セラミックス複合材料は、複合材料中の金属マトリックスがセラミックス粒子により分断されず連続的につながるように組織構造(金属マトリックスの3次元ネットワーク構造)を設計している。

 例えば、開発した金属-セラミックス複合材料の1つであるAl-SiCは、アルミニウム合金以上の熱伝導率を持ちながら、極めて低い熱膨張係数を実現している。炭化ケイ素(セラミックス)の含有量が少ないため、アルミニウム(金属)に近い優れた加工性を有し、一般的な金属加工方法も適用可能だ。

 さらに新しい金属-セラミックス複合材料は、Al-SiC以外の異なる金属とセラミックスの組み合わせや、その配合比率を変えることができるため、熱マネジメント部材の多様な材料特性ニーズに応じる。

開発した金属-セラミックス複合材料(Al-SiC)の特性(従来品との比較) 開発した金属-セラミックス複合材料(Al-SiC)の特性(従来品との比較)[クリックで拡大] 出所:三菱マテリアル

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