ルネサス エレクトロニクスはArmの「Cortex-M85」を搭載するマイコン「RA8シリーズ」を用いたデモを披露した。
同社はこれまでの小さく始めるAIパビリオンでサードパーティーのAIソリューションをRA8シリーズに組み込んだデモとして、Plumeraiのカメラ人物検知ソリューション、Nota AIのドライビングモニタシステムを展示してきた。今回披露したのは、Aizipの顔認証ソリューションである。
カメラで撮影した人物の顔から5つ特徴点を抽出し、それを基に個別の人物の顔認証を行える。未登録の人物についても撮影画像から5つ特徴点の抽出を行った上で、追加で顔認証データベースに登録することができる。なお、デモに用いた「RA8D1」のメモリ容量は1M〜2MBだが、AIモデルの容量はKBクラスであり、100人まで顔認証データベースへの登録が可能である。
さて、今回の小さく始めるAIパビリオンだが、英訳は「Small Start MCU/MPU AI Pavillion」となっている。2023年5月の初開催では「Small Start MCU AI Pavillion」だったので、今回はマイコン(MCU)ではないものの、省電力のMPUを用いた展示も行われた。
NXPジャパンは、省電力MPUである「i.MX 95」上でSLM(小規模言語モデル)とRAG(検索拡張生成)を組み込んだエッジ生成AIのデモを披露した。i.MX 95は、「Cortex-A55」×6コア、「Cortex-M7」×1コア、「Cortex-M33」×1コアに独自のAIアクセラレータである「NXP eIQ Neutron」を集積したMPUである。
NXPジャパンは、無償で提供しているAI/機械学習開発ソフトウェア「eIQ AIソフトウェア」の最新アップデートで、エッジ機器向けに生成AIのカスタマイズ手法の一つであるRAGの作成を行える「eIQ GenAIフロー」という機能を新たに追加している。今回のデモは、eIQ GenAIフローを用いて、オープンソースのSLMである「H2O Danube」に、糖尿病の治療に用いられるインスリン注射の方法をまとめたPDFファイルからRAGを生成して導入している。インスリン注射を行う位置を聞いたところ、RAGなしの場合と比べて、RAGありの方がより正確な回答が得られた。「eIQ GenAIフローは2025年3月末にリリースされたばかりの機能であり、今回のデモも国内で一般公開するのは初めて。数W以下という低い消費電力でRAG付きのSLMを実装して動作させられる点を訴求していきたい」(NXPジャパンの説明員)。
ルネサス エレクトロニクスは、RA8シリーズなどのマイコンのデモに加えて、独自AIアクセラレータを搭載するMPU「RZ/V2H」を用いたデモを披露した。RZ/V2Hは、Cortex-A55×4コア、Coretx-R8×2コアに電力効率で10TOPS/WのAI処理性能を持つAIアクセラレータ「DRP-AI3」を集積している。
デモでは、ディープインサイトのエッジAIタッチレスUI「KAIBER Touchless」とToFカメラの組み合わせによる空間ジェスチャー操作を行った。デモシステムの開発ではグレープシステムが協力している。「RZ/V2Hの高いAI処理性能に興味を持ってもらえるようなデモとして用意した。RA8シリーズで協業したAizipとの間では、より低コストのAIアクセラレータ搭載MPUとなる『RZ/V2L』にSLMなどの生成AIを組み込むことなども検討している」(ルネサス エレクトロニクスの説明員)という。
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