「第7回 AI・人工知能EXPO 【春】」の「小さく始めるAIパビリオン」に、STマイクロエレクトロニクス、NXPセミコンダクターズ、ルネサス エレクトロニクスが出展し、マイコンによるAI活用をテーマにしたデモ展示を披露した。
AI(人工知能)の活用には高性能のMPUやGPUが必要になるイメージが強い。末端の組み込み機器に搭載されるようなマイコンでは、処理性能もメモリ容量も圧倒的に不足していてAIの活用などは到底不可能なようにも思える。
「第7回 AI・人工知能EXPO 【春】」(2023年5月10〜12日、東京ビッグサイト)の「小さく始めるAIパビリオン」には、大手マイコンベンダーであるSTマイクロエレクトロニクス、NXPセミコンダクターズ、ルネサス エレクトロニクスの3社と、AIスタートアップのエイシングが出展し、マイコンによるAI活用をテーマにしたデモ展示を披露した。本稿では大手マイコンベンダー3社の「マイコンでAI」を志向した展示を紹介する。
なお、エイシングが同展示会への出展に合わせて発表した、「汎用マイコンで深層学習」を可能にする「AiirDNN」については既報をご覧いただきたい。
STマイクロエレクトロニクスは、同社のマイコンファミリー「STM32」向けに最適化された機械学習ライブラリを生成するツール「NanoEdge AI Studio」のデモ展示を披露した。
NanoEdge AI Studioは、AI学習のベースとなるセンサーデータを入力するとともにターゲットとなるSTM32マイコンの品種を設定することで、最適化された機械学習ライブラリを自動で生成するツールである。「専門知識がなくてもマイコンにAIを実装できる。STM32マイコンはCoretx-M0+を搭載するローエンドの品種もあるが、それに合わせて機械学習ライブラリを生成してくれる」(STマイクロの説明員)という。また、デバイス上で追加学習が可能であり、異常検知アルゴリズムなどを周辺環境の変化に追随させることも可能だ。
展示では、3軸振動センサーとSTM32マイコン、Bluetoothモジュールを組み合わせた外付けモジュールを用いたポンプの異常検出デモを披露した。2種類のポンプ設置環境を用意しており、一方のポンプ設置環境に最適化してある異常検知アルゴリズムを、もう一方のポンプ設置環境で追加学習することで、設置環境が変わっても異常検知が可能なことを示した。
NXPセミコンダクターズは、独自のNPU(ニューラルプロセッシングユニット)を搭載するマイコン「MCX-Nシリーズ」を用いたデモを披露した。
MCX Nシリーズは、Armの「Cortex-M33」をデュアルコアで搭載し最大150MHzで駆動するマイコン製品である。最大の特徴は、CPUコア単体と比べて最大30倍の機械学習処理性能を発揮できるNPUを搭載していることだ。デモ展示では、顔検出アルゴリズムの推論実行時間について、NPUなしだと約900msかかるのに対し、NPUを使うと約20msまで高速化できることを示した。
この他、マイコンとMPUの中間に位置付けられる「i.MX RTシリーズ」を用いて、機械学習ソフトウェア開発環境「eIQ」で開発した音声認識アルゴリズムを実行するデモも披露した。eIQは、機械学習モデルの著作権を保護するウオーターマーク機能が大きな特徴になっているという。
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