ダイナミックマッププラットフォームが提供する商品は、自動運転システムやADASの認知/判断/操作に必要な高精度地図が代表的だ。センサーと併用して自車位置を推定する他、行く先のルートに合わせた運転計画を立案してステアリングや速度を制御する。レーンキープとアダプティブクルーズコントロールを組み合わせて渋滞時にステアリングから手を離せる「ハンズオフ」が高精度地図によって実現した。
高精度地図の生成技術を応用したガイダンス機能も展開する。高精度地図には道路の幅やガードレールなど構造物の情報が含まれている。これらの情報を可視化することで、除雪作業を支援することができる。北海道や東北を中心に複数の地方自治体から受注し、除雪作業の安全性向上や作業日数短縮などに寄与している。また、坂の勾配のデータを基にトラックなどの燃費走行を支援するガイダンスも展開していく。
高精度地図の生成は当初、高速道路が中心だったが、日本国内は都市部以外で3次元化のニーズが強くある。港湾や空港、倉庫など私有地の3次元化も活発に行われているという。敷地内を走行する車両のガイダンスや自動運転化に貢献する。
これ以外にも、高精度な3次元データをWebブラウザから閲覧できるようにするViewer機能も提供している。現場に行かずにセンチメートル級の計測や角度計算が可能になる。大手損害保険会社や事故調査会社などに導入実績がある。デジタル空間で事故現場の道路構造や位置情報を分析し、リアルでの現場確認の作業を最小限に抑えられるメリットがあるという。現場に向かう作業員は3分の2に減らすこともできたとしている。
Viewer機能はインフラ管理の他、自律移動モビリティのルート設計やモビリティサービスの交通シミュレーションなどにも提案していく。
ダイナミックマッププラットフォームは、売り上げの7割が海外だ。そのうち北米が最も事業規模が大きい。GM傘下の高精度地図製作会社を買収したこともあるが、その後も投資を継続して拡大してきた。
米国で高精度3次元データのビジネスが大きいのは、自動運転技術のためだけではない。米国では世界恐慌による経済危機を克服するため、1930年代にニューディール政策が実施され、公共事業でインフラ整備が行われた。その結果、日本よりも早い段階で1980年代にはインフラの劣化に直面。国土も広いことから、インフラのデジタル管理の市場が立ち上がった。高精度3次元データにインフラの情報を反映させて管理する。そのためダイナミックマッププラットフォームでは北米の事業規模が大きい。
日本でも、埼玉県の道路陥没事故をきっかけにインフラの劣化に対する危機感が高まっている。吉村氏は「日本でも米国と同様にインフラのデジタル管理のニーズが生まれる」という。道路の陥没などは既存の高精度地図の生成とは違うセンサーも必要になるためダイナミックマッププラットフォームがインフラ点検まで担うことは難しいが、デジタルマップの活用拡大が有望な領域だと見込んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.