高精度地図のダイナミックマッププラットフォームが上場、今後の展開は自動運転技術(2/3 ページ)

» 2025年03月31日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 プロジェクト型では、自動車以外では官公庁主導の研究開発案件なども手掛けている。ライセンス型のビジネスは、自動車関連では量産車への高精度地図搭載における台数ベースのライセンス売り上げがある。搭載車種はトヨタ自動車やホンダ、日産自動車、GM(General Motors)の合計35モデルだ。自動車以外では、多用途展開が可能なプラットフォームを構築している。法人向けのデータライセンス提供も行っている。

 自動車関連のプロジェクト型のビジネスは、先進国のデータ整備がほぼ完了したことから今後の追加コストは限定的になると見込んでいる。26カ国に進出しており、カバー範囲は日本の高速道路3.3万kmの他、北米が120万km、欧州が25.5万km、韓国の高速道路2万kmとなっている。中東でも2025年度中に高速道路のデータ整備が完了する見通しだ。大手自動車メーカーの要求を満たす品質で、グローバルに同一仕様でカバレッジを確保したことが競合に対する優位性だとしている。

ダイナミックマッププラットフォームの概況[クリックで拡大] 出所:ダイナミックマッププラットフォーム

 カバレッジの新規拡大は需要に応じて実施していく方針で、具体的な地域は非回答だがある自動車メーカーと契約交渉中だという。今後のデータ新規整備はある程度高い収益性を見込める条件で受注したい考えだ。

マップレスの自動運転は「敵ではない」

 自動車関連の主な顧客は、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車、GMなど。自動車以外では、経済産業省や国土交通省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、デジタル庁、東京都や静岡県など官公庁の顧客を持つ。民間企業では、あいおいニッセイ同和損害保険、SBI損害保険、ソフトバンク、NTTデータ、ネクスコ東日本などと取引している。

 「レベル2+(プラス)」よりも高度なADASや自動運転システムのグローバル市場は、全体で2030年までに2670万台に達すると見込まれており、全ての新車販売の28%を占めると予測される。2022年からの年平均成長率は37%だ。このうち、ダイナミックマッププラットフォームが2030年に獲得可能な市場規模は1110万台と見込んでいる。

 自動車業界では、高精度地図に頼らずセンサーのみで周辺を監視しながら走行する自動運転技術を開発する動きもある。これに対し、吉村氏は「マップレスの自動運転技術は自動運転車の市場全体が成長するための重要なテクノロジーで、敵だとは思っていない。車両に搭載しなくても、AI(人工知能)の学習にわれわれのデータを活用する動きもある。また、高精度地図はセンサーが不利になる悪天候でもシステムに判断材料を提供できると考えている」とコメントした。

 自動車向けに限定しないデジタルマップの市場規模は足元の2023年でもグローバルで3.4兆円あり、このうちダイナミックマッププラットフォームが獲得可能な市場規模は1.6兆円に上ると見込んでいる。

ダイナミックマッププラットフォームが関わる領域の市場見通し[クリックで拡大] 出所:ダイナミックマッププラットフォーム

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