住友ゴムの長期経営戦略 路面にタイヤが適応し変化する次世代スイッチを開発製造マネジメントニュース(2/5 ページ)

» 2025年03月14日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

アクティブトレッド技術の進化

 「アクティブトレッド技術の進化」ではさまざまな道路に対応するタイヤ用ゴム材料「アクティブトレッド」を配合する「アクティブトレッド技術」の開発を進める。現在、アクティブトレッドは、水に接触することでゴムが軟化し滑りにくくなる「水スイッチ」と、低温になるとゴムが軟化する「温度スイッチ」の2種類がある。住友ゴムは両スイッチを適用した次世代オールシーズンタイヤ「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」を開発し、2024年10月1日に発売した。同社 代表取締役社長の山本悟氏は「両スイッチを適用した海外向けのオールシーズンタイヤも開発中だ」と話す。

 2028〜2030年にはゴムが硬化およびハイグリップとなる「第3のスイッチ」を開発する。グリップと耐摩耗性を高いレベルで両立する第3のスイッチは電気自動車(EV)向けタイヤや超高性能スポーツタイヤに適用する予定だ。「第3のスイッチで必要な技術は既に明確になっており、販売に向けて開発を進めている」(山本氏)。

「アクティブトレッド技術の進化」 「アクティブトレッド技術の進化」[クリックで拡大] 出所:住友ゴム

 2035年には外部環境の変化に依存せず、プロアクティブにゴムの特性を変えたり、パターン形状を変化させたりできる「次世代スイッチ」を開発する。次世代スイッチは独自のタイヤセンシング技術「センシングコア」で得られた路面の情報を踏まえて環境に応じた性能に変わる。このスイッチは自動運転車などの次世代モビリティー向けタイヤに適用する予定だ。

 また、「ゴム起点のイノベーション創出」を加速する目的で、2028年に国内研究拠点「イノベーションセンター」を設立する。

 「ゴム起点のイノベーション創出」における指標として同社は研究開発への投下資金を設定。研究開発への投下資金は2024年が年間277億円で、2027年は350億円以上、2030年は500億円以上を設定している。

ブランド経営強化

 「ブランド経営強化」では「DUNLOPを基軸としたブランディング」を行う。「DUNLOPを基軸としたブランディング」では、DUNLOPのアイデンティティーやコミュニケーションブランドの統一、事業/地域横断のブランディング拠点設置、ブランド経営指標の導入、ブランド投資の推進を実施する。

「DUNLOPを基軸としたブランディング」 「DUNLOPを基軸としたブランディング」[クリックで拡大] 出所:住友ゴム

 具体的には、タイヤ事業でプレミアム製品の展開とモータースポーツへの参入を行う。スポーツ事業ではテニスの選手とのプロ契約や大会との協賛などを通してスポーツで利用されているイメージを発信し、ブランド好意度の底上げを図る。産業品事業では高付加価値商品の提供により社会課題を解決する。

 加えて、市場ニーズを捉え、イノベーションを事業化するマーケティング力の強化を目的にブランド拠点「北米イノベーションラボ」を2026年に米国で開設する予定だ。

「ゴム起点のイノベーション創出」と「ブランド経営強化」で新拠点を設置 「ゴム起点のイノベーション創出」と「ブランド経営強化」で新拠点を設置[クリックで拡大] 出所:住友ゴム

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