タイヤ事業の製造戦略では、「In−House New Factory」という新しい工場リニューアルのコンセプトに基づき、プレミアム商品の開発と生産を推進する。In−House New Factoryは、既存の生産拠点の一部を最新鋭の生産設備にリニューアルするコンセプトで、拠点全体の操業を止めることなく、競争力がある最新鋭の生産設備への移行を目標に掲げている。
このコンセプトに基づき、住友ゴムでは独自開発の次世代成形機「COMPACTIVE−TBM」やシームレス自動搬送システム、データ駆動型の生産管理、新・製造システム「SUN−TITAN SYSTEM」を導入する。
COMPACTIVE−TBMは、既存の工場に設置可能な次世代成形機で従来機と比べて35%の省スペース化を実現しており、高性能タイヤを高精度/高効率で生産できる。シームレス自動搬送システムは、工程間の自動搬送に対応し、人的ミスや搬送遅延の削減、工場の稼働効率を高められる。データ駆動型の生産管理では、設備稼働率や品質データなどからリアルタイムで異常を検知し予兆保全を強化する他、AI(人工知能)でプロセスの改善や生産計画の最適化を行う。
SUN−TITAN SYSTEMはSUV用タイヤに求められる高いデザイン性と真円性を両立するシステムで、従来の独自システム「太陽」を進化させたものだ。新たな製造システムにより従来と比べ重量バランスで40%の向上と軽量化の実現を目指す。「SUN−TITAN SYSTEでは、乗用車用タイヤの製造で培ったストリップワインド方式でデザイン性と軽量化を高次元で実現する」(山本氏)。ストリップワインド方式とはストリップ状の材料をらせん状に巻き重ねて成形する方式を指す。
これらのシステムや生産管理で、国内外の工場にある乗用車向けの汎用品ラインを、SUVやピックアップトラック向け大外径タイヤなどのプレミアム商品を生産するラインへ順次切り替える。
タイヤ事業における生産アロケーションの最適化では、タイと日本の工場はプレミアム商品の輸出拠点として活用し、南アフリカなどにあるその他工場は地産地消の拠点として、生産したタイヤを工場が立地する国や地域で販売。将来は地産地消をスムーズに行えるように供給体制の見直しを検討する。
2027年までにはタイ工場と日本の主要工場にCOMPACTIVE−TBMとSUN−TITAN SYSTEMの導入完了を目指す。導入後は日本や欧州、米国向けのプレミアム商品を生産。2027年以降は、グローバルに各工場の生産アロケーションを最適化する。
センシングコアでは、自動運転とフリートマネジメント(車両管理)向けのビジネスをターゲットに展開にすることを構想している。自動運転ビジネスについては、SDV(ソフトウェアデファインドビークル、ソフトウェア定義型自動車)化が進むモビリティーの開発にセンシングコアの技術で参画するとともに、自動運転と先進運転支援システムへの対応も行う。フリートマネジメントビジネスでは、センシングコアを用いた車両管理サービス(故障予知サービスなど)を、北米、欧州、日本、中国、他のエリアへ展開し、車両のダウンタイム削減に貢献する。これらの取り組みにより、2030年にセンシングコアの事業利益で100億円以上を目指す。
センシングコアはスタンドアロン型とクラウドインストール型の2タイプがある。スタンドアロン型は車載コンピュータにセンシングコアをインストールする。その後、自動車の各種信号データから、センシングコアがタイヤや路面の状態などを導出してその情報を自動車とドライバーに共有できる。
クラウドインストール型は、自動車の各種信号をクラウドにアップロードし、これらの信号をクラウド上のセンシングコアが解析して、タイヤや路面の状態などを導き出し、その情報を管理者にフィードバックおよび共有できる。「スタンドアロン型はセンシングコアの全機能を提供可能で、クラウドインストール型は機能更新/拡張が容易という特徴がある」(山本氏)。
センシングコアは、タイヤの回転やエンジン情報、メンテナンス/修理歴のデータ、自動車で使われるケースが多い通信プロトコル「CAN」のデータから、タイヤの空気圧、荷重、摩耗、車輪の脱落予兆、路面状態のアラートを算出できる。今後はこの点を生かし、他社のサービスとも組み合わせ、タイヤ向けのシステム開発やメンテナンスサービスを展開する。
例えば、車両性能の向上や路上事故の防止、車両部品の故障アラート、車両部品の故障予知、サービス部品の在庫最適化、車両の製造/運行、インフラの管理/整備の簡略化、自動車のCO2排出量を可視化するサービスを想定している。
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