帝人が環境配慮型の炭素繊維製品ブランドを立ち上げ 2つの製品を発売材料技術

帝人は、リサイクル材などを用いた環境配慮型の炭素繊維製品ブランド「Tenax Next(テナックス ネクスト)」を立ち上げ、同ブランドから2つの製品を発売すると発表した。

» 2025年03月06日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 帝人は2025年3月5日、リサイクル材などを用いた環境配慮型の炭素繊維製品ブランド「Tenax Next(テナックス ネクスト)」を立ち上げ、同ブランドから2つの製品を発売すると発表した。

Tenax Nextの概要

 Tenax Nextは、リサイクル材料やバイオマス材料をはじめとする環境配慮型の材料を原料に使用した炭素繊維製品のブランドだ。同ブランドの製品は環境配慮型の原料を用いながら、炭素繊維製品に求められる優れた強度や耐久性などの材料特性を有している。ブランド名は「新世代の素材」という意味を込めている。

「Tenax Next」のロゴ 「Tenax Next」のロゴ[クリックで拡大] 出所:帝人

炭素繊維短繊維「Tenax Next R2S 513 6mm」

 新ブランドにおいて展開を開始する製品は炭素繊維フィラメント糸「Tenax Next HTS45 E23 24K」と炭素繊維短繊維「Tenax Next R2S 513 6mm」だ。

炭素繊維フィラメント糸「Tenax Next HTS45 E23 24K」(左)と炭素繊維短繊維「Tenax Next R2S 513 6mm」(右) 炭素繊維フィラメント糸「Tenax Next HTS45 E23 24K」(左)と炭素繊維短繊維「Tenax Next R2S 513 6mm」(右)[クリックで拡大] 出所:帝人

 Tenax Next HTS45 E23 24Kは、再生可能エネルギーの活用や製造工程の効率化、環境配慮型の原料を用いることで、従来品と比較して製造プロセスにおいてCO2排出量を約35%削減する効果が期待できる。

 同製品は、持続可能な製品の国際認証である「ISCC PLUS 認証」に基づくマスバランス方式を適用させた環境配慮型の原料を用いている。この環境配慮型の原料は石油由来の原料と同等の物性を有するため、同製品は従来品と同等の物性を有している。そのため、航空宇宙や自動車といった材料認定が必要となる用途でも、従来品から同製品へ容易に切り替えることが可能だ。

 Tenax Next R2S 513 6mmは、炭素繊維の製造工程で発生した端材を回収し、リサイクルをして生産した製品だ。スポーツ/レジャーや電子機器、自動車など、さまざまな用途に使える。

 同製品は、製品ライフサイクルに沿ったトレーサビリティーの確保に必要な情報が記録されたデジタル証明「デジタルプロダクトパスポート」に対応しており、付随するQRコードを読み込むことで、製品を構成する材料や製造過程、CO2排出量などを確かめられる。

 これにより、同製品が関わるサプライチェーン上の企業は、自社が製造に用いた素材が、環境負荷低減に資する製品であることを証明することができる。

新ブランドの立ち上げ背景

 炭素繊維は、「軽くて強い」素材として航空機や自動車、スポーツ用品など幅広い用途で使用されている。近年、地球温暖化問題を背景に、製品のライフサイクル全体を通じた温室効果ガス(GHG)の排出量削減に貢献する製品が求められているが、幅広い用途に用いられる炭素繊維でも環境負荷の低減につながる持続可能な製品へのニーズが高まっている。こういった状況を踏まえて、帝人はTenax Nextを新たに立ち上げた。

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