富士経済は、産業用繊維、次世代繊維、不織布の市場動向調査の結果を発表した。用途開発が進む次世代繊維のセルロースナノファイバー(CNF)について、2030年の世界市場規模が4000万ドルに拡大すると予測している。
富士経済は2024年2月27日、産業用繊維、次世代繊維、不織布の市場動向調査の結果を発表した。
同調査は、産業用の注目繊維10品目と次世代繊維5品目の世界市場、不織布5品目の国内市場に加え、繊維のサスティナビリティに関する動きについて考察したものだ。
産業用繊維は、自動車や土木建設、エネルギーなどの分野で幅広く使われている。同社は、アジア圏の人口増加や経済成長に伴って、同市場が堅調に推移するとみている。特に高機能のアラミド繊維や超高分子量PE繊維、炭素繊維は、用途の拡大から需要が大きく伸びると予測する。
サステナビリティに関しては、パラ系アラミド繊維、産業用ポリエステル繊維、産業用ナイロン繊維で、繊維リサイクルの事業化が進んでいる。また、植物由来原料やバイオマス原料を用いたバイオ繊維製品の生産技術も開発されている。
次世代繊維のセルロースナノファイバー(CNF)は、軽くて強く、生分解性を有する他、有機溶剤への耐性に優れる。用途開発が積極的に進められており、日系製紙メーカーが多く参入している。現在は添加剤用途が中心だが、今後、モビリティなど産業分野への展開が見込まれ、2030年における世界市場規模は4000万ドル(2022年比90.5%増、約60億440万円)に拡大すると予測される。
同じく次世代繊維のPLA繊維(バイオプラスチック繊維)は、2030年に45億ドル(2022年比2.8倍、約6754億9500万円)の市場規模となる見込みだ。欧州や中国では政策としてバイオベースプラスチックの使用を推進しており、需要の中心となっている。
衛生材料や液体ろ過フィルターなどに多く使用される不織布については、2023年の国内市場を1864億円と推計。ポリエステル製のスパンボンド不織布は、リサイクル品の普及に加え、植物由来原料を用いた製品の開発も進むとみられる。湿式不織布とメルトブローン不織布は、電池材料や半導体、電子部品などに採用されており、今後の機能向上により需要の広がりが期待される。
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