カネカは、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」で、開発品としてリチウムイオン電池向けバインダー「カネエース バインダー」や「難燃テキスタイルおよびリチウムイオン電池向け不織布」、リサイクル可能な自動車用繊維製品「モノマテリアルカーマットと不織布製品」を披露した。
カネカは、「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)で、開発品としてリチウムイオン電池向けバインダー「カネエース バインダー」や「難燃テキスタイルおよびリチウムイオン電池向け不織布」、リサイクル可能な自動車用繊維製品「モノマテリアルカーマットと不織布製品」を披露した。
カネエースバインダーは、多層構造のポリマー粒子設計(コアシェルテクノロジー)を用いて開発中の製品だ。コアシェルテクノロジーは、中心に位置するコアのポリマーとその周りを取り囲むように搭載されたシェル(外殻)のようなポリマーから成る粒子で、コアとシェルの組み合わせによりさまざまな機能を付与できる。
同製品では、負極用、正極用、全固体電池用のカネエースバインダーの開発が進められている。
負極用カネエースバインダーは主にスチレンブタジエンゴム(SBR)を用いた製品だ。炭素(C)と一酸化ケイ素(SiO)を90:10で配合した負極材に、添加量1.5%で負極用カネエースバインダーを混合したものを備えたラミネート型リチウムイオン電池の開発品では、ピール強度で5.28N/2cm、100サイクル後の容積維持率で76%を記録。CとSiOを80:20で配合した負極材に、添加量2%で負極用カネエースバインダーを混合したものを搭載したリチウムイオン電池の開発品では、ピール強度で5.40N/2cm、100サイクル後の容積維持率で50%を達成した。
カネカの説明員は「これらの結果から、市場に流通しているSBRの負極用バインダーと比べて、少量の添加で活物質や集電箔の強い接合を実現し、ピール強度や100サイクル後の容量維持率も高められることが分かった」と話す。
正極用カネエースバインダーは主にアクリルを用いた製品だ。ニッケル、マンガン、コバルトの割合が8:(1):1になっているNCM811を活用した正極材に添加量4%で正極用カネエースバインダーを配合したコインセル型リチウムイオン電池の開発品では、ピール強度4.1N/2cm、50サイクル後の容量維持率で90%を記録した。
n-メチルピロリドン(NMP)を溶媒に用いたリン酸鉄リチウム(LFP)を活用した正極材に添加量3%で正極用カネエースバインダーを配合したコインセル型リチウムイオン電池の開発品では、ピール強度4.4N/2cm、50サイクル後の容量維持率で90%を達成した。「正極用カネエースバインダーはPFASおよびフッ素フリーに対応している他、溶剤フリーの配合にも応じる。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた市場流通品のバインダーと比べて、同等の容量維持率やそれを超えるピール強度も実現できる」(カネカの説明員)。
全固体電池用のカネエースバインダーは主にSBRを用いた製品だ。同製品の溶媒中分散可能濃度は、トルエンで30%未満、キシレンで20%%未満、酢酸ブチルで30%未満、酪酸ブチルで30%未満となる。カネカの説明員は「これらの結果から、溶媒種によらず低粘度で高濃度化が可能だと分かった。市場に流通しているSBRのバインダーでは、これらの濃度では非分散となるものが多い」と語った。なお、全固体電池のバインダーは、溶液中に分散可能な濃度を高めることで、電極活物質の分散性や電極の性能を向上させる効果がある。バインダーの分散安定性を高めることで、電極製造工程の安定性も高め、全固体電池の信頼性向上に貢献する。
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