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熱交換器の種類と伝熱計算方法はじめての化学工学(7)(1/2 ページ)

プラントでは、効率的に熱を移動させるために「熱交換器」が広く使われています。この記事では、代表的な熱交換器の種類とその特徴、使い分け方、基本的な伝熱計算方法について、初学者にも分かりやすく解説します。

» 2025年06月04日 08時00分 公開
[かねまるMONOist]

熱交換器の種類

 熱交換器とは、2つの異なる温度を持つ流体間で熱を移動させる装置です。高温流体の熱を低温流体に伝えることで加熱/冷却を行います

 熱交換器には多様な種類があり、それぞれ構造や材質、対応可能な圧力/温度範囲、洗浄性、設置スペースの制約などに応じて最適な用途があります。代表的な熱交換器としては、「多管式(シェル&チューブ式)」「プレート式」「二重管式」「空冷式(フィンチューブ式)」「スパイラル式」などが挙げられます。

  • 多管式(シェル&チューブ式):構造が単純であり、高圧/高温に対応できます。
  • プレート式:熱交換効率が高く、コンパクトです。
  • 二重管式:構造が簡単で、高粘度の流体にも対応可能です。
  • 空冷式(フィンチューブ式):空気を冷却媒体とし、水を使用しません。
  • スパイラル式:自己洗浄性があり、汚れやすい流体にも適しています。

 多管式(シェル&チューブ式)は多数のチューブをシェル(外筒)の中に束ねた構造で、片方の流体はチューブ内、もう一方はシェル側を流れます。非常に幅広い温度/圧力条件に対応でき、構造が単純で保守性も高いため、多くの化学プラントで採用されています。高圧ガスや高温流体の熱交換にも適しており、スケールアップにも対応しやすい汎用性の高い形式です。

 プレート式は金属製の薄いプレートを積層し、その間に流体を流すことで熱交換を行います。プレートの表面には波形などの凹凸があり、乱流を促進することで高い熱交換効率を実現しています。装置がコンパクトで省スペースに優れており、またプレートを分解して洗浄できるため、食品、医薬、ファインケミカルなど、衛生性が求められる用途にも向いています。

 二重管式は太い管の中に細い管を通し、内外で異なる流体を流して熱交換を行う構造です。最もシンプルな構造であり、製作やメンテナンスが容易です。小規模な熱交換や高粘度流体の処理に適しており、可搬型装置やパイロットプラントなどでも使用されます。

 空冷式(フィンチューブ式)は空気を冷却媒体として用いる熱交換器で、フィン付きチューブを使って表面積を増加させ、空冷の効率を高めています。水を使用しないため、水資源の制約がある場所や排水処理の負荷を抑えたい場合に有利です。主に冷却塔や屋外設備に利用されます。

 スパイラル式は2枚の金属板をらせん状に巻いた構造で、流体がスパイラル状の通路を通って熱交換を行います。流路が連続しているため、流速が一定でスケールの堆積が起きにくく、自己洗浄効果も期待できます。高粘度流体や固形分を含む流体や汚れやすいプロセスに適しています。

熱交換器の設計/選定のポイント

 熱交換器を設計する際には、伝熱量、流体の物性、温度と圧力の条件、流体の流れ方向、設置条件などさまざまな要素を考慮します。

  • 伝熱量:熱交換器の性能の基本となります。
  • 流体の物性:伝熱係数や圧力損失に直接影響します。
  • 温度および圧力の条件:耐熱性や耐圧性に影響します。
  • 流体の流れ方向:熱交換性能を左右し、主に向流が選ばれます。
  • 設置条件:装置のサイズ、形状、保守性などを実際のプラントに適合させます。

 特に設置条件については化学工学計算だけでは判断できない部分です。プラント内でのスペース制約、装置の配置、周辺機器との接続、そして日常的なメンテナンスのしやすさなど、実際の現場に即した観点から装置のサイズや構造を検討する必要があります。使用できる熱交換器にも制約が出る可能性があります。

 最終的には初期投資+運転コストを合わせたトータルコストで総合評価が必要です。

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