自動車の北米ビジネスはどうなる? ホンダが予測する関税の影響製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2025年02月28日 13時30分 公開
[齊藤由希MONOist]
前のページへ 1|2       

不透明な中でも展開が始まるホンダのEV

 ホンダの四輪事業は、EVを除く営業利益率が8%まで向上したという(四輪事業全体の営業利益は2024年4~12月期で3.7%。これに対し二輪事業は18.5%)。2026年度ごろから次世代HEV(ハイブリッド車)が主力になると、EVを除く営業利益率は10%を超えると見込んでいる。HEVとガソリン車で利益率を高めながら、EVを巡る状況へ臨機応変に対応していきたい考えだ。

事業別の売上高と営業利益率[クリックで拡大] 出所:ホンダ

 2025年度に投入する自社開発のEVは現状よりも収益性が改善する見通しだ。しかし、米国のインフレ抑制法(IRA)での税控除(1台7500ドル)を前提にしているため、トランプ政権の方針が明らかになるまでは不透明な状況が続く。

 EVの収益性向上は仕込みの真っただ中だ。青山氏は「今見えている範囲でいうと、決して事業性の高いものにはならないが、次の世代の仕込みや2025年度に投入するモデルのさらなる事業性改善にコストをかけながら取り組んでいる。EVの事業性は徐々に良くなっていくとみている」と説明した。

 ホンダが自社開発する「0シリーズ」やアキュラブランドの新型EVは2025年度の後半に市場投入されるが、「EV戦略は非常に悩ましいところ」と青山氏は説明した。EVの投入に合わせて、バッテリーを供給するLGエナジーソリューションとの合弁工場も稼働する。「始める以上は一定の販売をやっていきたいが、バッテリーのボリューム感も含めて非常に悩ましい議論を継続的にやっているところだ」(青山氏)

足元の業績は

 ホンダが2025年2月13日に発表した2024年4~12月期(2025年3月期第3四半期)決算は、売上収益(売上高)が前年同期比8.9%増の16兆3287億円、営業利益が同5.9%増の1兆1399億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益(当期純利益)が同7.4%減の8052億円だった。

2024年4~12月期の業績[クリックで拡大] 出所:ホンダ

 二輪事業はアジアをはじめグローバルで販売が好調に推移した。インドやブラジルでの需要が堅調だった他、ベトナムでの景気回復などが寄与した。四輪事業は、北米での販売が堅調だったが中国を中心にアジアで減少したのが響いた。四輪事業の小売り実績は米国は前年同期比6.5%増の109万台、日本は同13.4%増の48.5万台、中国が同36.3%減の64.5万台だった。

2024年4~12月期の地域別販売台数[クリックで拡大] 出所:ホンダ

 営業利益の増減要因をみると、インセンティブ(販売奨励金)の増加で1043億円、人件費や外部委託費の増加などで543億円といった減益要因があった。研究開発費も975億円増加したが、商品価値向上や値上げが3760億円の増益要因となった。

2024年4~12月期の営業利益の増減要因[クリックで拡大] 出所:ホンダ

 2024年度(2025年3月期)通期は、売上高が前年度比5.7%増の21兆6000億円、営業利益が同2.8%増の1兆4200億円、当期純利益が同14.2%減の9500億円と計画している。営業利益と当期純利益は前回の見通しを据え置いたが、売上高は前回の見通しから6000億円増に引き上げた。

 インセンティブや諸経費、研究開発費の増加が減益要因となるが、値上げによる増益や二輪事業の販売台数増加でカバーする。二輪事業は販売台数を上方修正し、過去最高の台数を狙う。四輪事業は日本での販売減少を反映して販売台数を下方修正した。

→その他の「製造マネジメントニュース」関連記事はこちら

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.