仮想仕事の原理による動的問題の解法に適した、ラグランジュの方程式の説明に入る前に、一般座標と一般力について説明する。
前回取り上げた回転2関節機構(図5)を例に、通常の直交座標と一般座標について述べる。
図5に示すように、直交座標では点1、点2の座標は、
である。この情報だと、合計で4つの自由度があるように見える。しかし、本問題の場合は、
という2つの制約条件があるため、自由度は2つである。このように、直交座標を本問題に適用するのは煩雑でもあり、分かりにくい。
そこで、図5に示すようにθ1,θ2なる新しい座標を用いると、点1と点2は、
で定義される。これを見れば自由度が2つであることは明白で、意味するところも直感的に理解できる。
このように、問題に応じて座標を定義したものを一般座標と呼ぶ。上記のように、直交座標は一般座標の関数として表現される。
以上のように、一般座標は便利ではあるが、座標の定義が異なってくるため、直交座標で定義された力を一般座標に変換する必要がある。
ここで、一般座標q1,q2……qnで規定されたn自由度系を考える。座標qiは互いに独立であり、今、その1つqrにδqrの仮想変位を与え、他はそのままにしたものとする。このとき、この系に作用する仮想仕事δWrは、
となる。ここで定義されるQrを、一般座標qrに関する一般力と呼ぶ。
例えば、図6に示す棒ABの両端に力が作用して、つり合っているとする。
このとき、角度qがq+δqに変化すると、
となる。従って、このときの一般座標qに関する一般力は、
となる。その際、仮想仕事δWは仮想仕事の原理により0であるため、F1a=F2bであることは明白である。
一方、n自由度の質点系においてi番目の質点に作用する力を、平面内の運動を考えてXi、Yiとすると、仮想変位中に力によってなされる仕事は、
となる。これは直交座標表現なので、一般座標表現に変換する必要がある。このとき、
であるので、これにより、
となり、
となる。このとき、Qrは一般座標qrに関する一般力となる。
図7の二重振り子を例に一般力を求めてみる。
2自由度、2質点系なので、n=2、一般座標θ1,θ2である。このとき、
となるので、これを用いて計算すると、
となる。
次回は、今回紹介した“仮想仕事の原理”の動的問題への適用、すなわちラグランジュの方程式の導出手順と適用事例について説明する。 (次回へ続く)
大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.