続いて、安価な3Dプリンタの代表例として3つの機種を紹介します。他にもいろいろと取り上げたい機種がありましたが、今回は筆者が所有するもの/気になっているものを中心に紹介することにします。
筆者自身はFLASHFORGEの「Adventurer3」を持っていますが、ワンプッシュでノズル交換できたり、プラットフォームが磁気式で取り外ししやすかったりなど、初心者でも使いやすい3Dプリンタです。Adventurer5Mは6万500円(税込み)で、完全密閉型のAdventurer5M Proでも8万4700円(同)と10万円を切る安さです。どちらも最高移動速度が毎秒600mmと、高速造形が可能な高機能3Dプリンタです。
Adventurer5M
https://flashforge.jp/product/adventurer5m/
筆者はELEGOOの液槽光重合方式3Dプリンタを所有していますが、同社は材料押出方式3Dプリンタも開発販売しており、いずれも10万円以下で購入可能な機種を豊富に取りそろえています。特に液槽光重合方式3Dプリンタのラインアップが豊富で、例えば「ELEGOO Mars 5」は定価3万4199円(税込み)でありながら、6.6インチの4KモノクロLCDを搭載し、35×35μmのXY解像度を誇り、より精細な造形が可能となっています。
筆者は所有していませんが、Bambu Labの材料押出方式3Dプリンタ「Bambu Lab A1 mini Combo」は4色までのマルチカラー造形が可能な3Dプリンタでありながら、定価8万1800円(税込み)で購入できます。X(旧:Twitter)などで「高速、高精度」と話題となった他、全自動キャリブレーション機能や自動流用補正キャリブレーション機能などが搭載されています。
Bambu Lab A1 mini Combo
https://jp.store.bambulab.com/products/a1-mini?variant=47751885816100
近年、安価な3Dプリンタはコストパフォーマンスを重視しつつも、技術進化によって高性能化しており、初心者から中級ユーザーにとって魅力的な選択肢となっています。さらに、教育やクリエイティブな分野での活用が進むことで、今後も市場は成長すると予想されます。
2024年7月にTechFactoryが実施した「製造業における3Dプリンタの利用に関する調査」では、活用の課題に「装置の価格」と「材料の価格」が上位に並んでいました。次に「造形スピード/造形時間」と「造形物の品質・精度」が挙げられています。求める品質や精度によっては高額なハイエンド3Dプリンタが必要になるケースもありますが、今回紹介したように数万〜10万円程度の価格帯の3Dプリンタでも優れた製品が開発提供されつつあります。「安かろう悪かろう」と決め付けずに、安価な3Dプリンタも導入検討の選択肢の一つに加えてみてはいかがでしたでしょうか?
さすがに“設計者1人に、3Dプリンタ1台”は極端だと思いますが、品質向上、コスト削減、納期短縮を実現しつつ、より良い製品を生み出し、次につながるイノベーションを創出できる、そんな製品開発の現場を目指すのであれば、3Dプリンタを積極的に導入し、設計者が好きなタイミングで試作できる環境を構築すべきだと考えます。
また、トライ&エラーを何度も繰り返すことで設計力は向上します。特に新人や若手の設計者にとって、3Dプリンタは失敗を経験して成長できる有効な教育ツールにもなり得ますので、これを機にぜひ導入を検討してみてください。 (次回へ続く)
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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