材料押出方式の安価な3Dプリンタの場合、使用できる材料が限定されてしまうケースもあります。一般的に使用できるのがPLAです。次にABSとなります。それ以外の材料として、PET、PC、TPU、PP、複合材料などが挙げられます。複数の材料に対応できる機種の中には、特定の材料に対応するためにノズルを交換したり、プラットフォームにシートを張ったりなどの手間が発生するものもあります。また、対応をうたっていても造形品が反ってしまう場合などもあります。
材料押出方式3Dプリンタにおける造形品の反り対策としては、プラットフォームにテープを張ったり、のりを塗ったりといったものが挙げられます。また、機種によってはプラットフォームにヒーターが内蔵されているものや、筐体全体で造形エリアを密閉して外気の影響を受けにくくし、反りや浮きなどを防いでくれるものもあります。特に、高額の材料押出方式3Dプリンタになると庫内(チャンバー)の温度を適切に制御/管理し、造形エラーや品質の低下を防いでくれます。
3Dプリンタを長時間使用していると、駆動部品などが摩耗したり、劣化したりするため、修理/メンテナンスが必要になることがあります。このような場合、ワンタッチで簡単に部品交換ができることが望ましいです。たくさんネジを外す必要があったり、取り外しづらかったり、組み付けにくかったりすると、その分ダウンタイムが長くなってしまいます。
さらに、キャリブレーション(水平や高さの調整)のしやすさも重要なポイントです。一番楽なのは自動でキャリブレーションしてくれるタイプです。手動でも慣れればそれほど問題ありませんが、ボタン1つで完結できる方が手間もなく確実です。キャリブレーションの詳しい解説については、過去連載「造形品質を大きく左右する3Dプリンタのキャリブレーションの重要性」をぜひご覧ください。
他にも、メンテナンスや不具合の対応に関していえば、インターネット上にその機種に関する情報があるか、相談できる窓口があるかなども重要です。また、英語に自信のない人は、日本語のWebサイトや解説動画、サポート窓口などがある機種を選んだ方がよいでしょう。
基本的に、造形サイズが大きい機種ほど本体の価格も高額になりますが、いろいろと調べてみると、中には数万円程度でそれなりの造形サイズを備えた機種も販売されているようです。また、造形サイズが大きくなると、当然装置のサイズも大きくなるため、より広い設置スペースが必要になります。目的や使用したいサイズに応じた機種を選定するようにしましょう。
「大は小を兼ねる」という言葉がありますが、大型造形に対応する機種の中には、他と比べて造形精度が劣るものもあるため注意が必要です。可能であれば、実演デモや造形サンプルなどを通じてしっかりと見極めたいところです。
以上、安価な材料押出方式3Dプリンタにおける6つの選定ポイントについて紹介しましたが、さらに加えるのであれば「使いやすさ」も重要な選定基準となります。
安価な材料押出方式3Dプリンタの場合、組み立て式で販売されており、部品を一から組み立てるところから始めるものもあります。普段からモノづくりに慣れ親しんでいる方であれば特に問題ないと思いますが、そうでない方にとっては苦労する可能性も考えられます。
また、操作画面が日本語対応していないもの、タッチパネル操作ではなく物理ボタン式のもの、PCと接続して操作する必要があるものなど、さまざまなタイプの機種があります。これらについても導入検討の際に確認しておくとよいでしょう。
その他にも、Wi-FiでPCやスマートフォンと接続して操作したり、カメラで監視できたりする機種や、Web(クラウド)上の3Dデータを直接ダウンロードして造形できるものもあります。
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