核融合発電の連載が1位に、爆発するリチウムイオン電池を見抜く装置の記事も人気素材/化学 年間ランキング2024(2/2 ページ)

» 2024年12月26日 07時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]
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第2位は爆発するリチウムイオン電池を見抜く装置

 MONOist 素材/化学フォーラム年間ランキングで第2位に輝いたのは、「爆発するリチウムイオン電池を見抜く検査装置を開発した神戸大・木村教授に聞く」でした。

 本記事では、製造したリチウムイオン電池が爆発するかを見抜ける検査装置「電流経路可視化装置」と「蓄電池非破壊電流密度分布映像化装置」を開発した神戸大学 数理データサイエンスセンター教授の木村建次郎氏が、両装置の開発背景や機能、導入実績、今後の展開などをインタビューを通して紹介しています。

 近年、電気自動車(EV)やスマートフォンなどに利用されるリチウムイオン電池は、不良品の場合に発火リスクがあるため製造工程で問題がないかエージングなどの検査が行われています。しかしながら、従来の検査装置は、多くのコストと時間を要していただけでなく、不良品を感知できずにそのまま出荷されるという危険性がありました。そのため、不良品を見抜ける検査装置がさまざまな電池メーカーに求められています。こうした背景から同記事は多くの読者の関心を集めたんだと思います。

リチウムイオン電池の構造と蓄電池非破壊電流密度分布映像化装置で可視化した充電中の内部[クリックで拡大] 出所:IGS リチウムイオン電池の構造と蓄電池非破壊電流密度分布映像化装置で可視化した充電中の内部[クリックで拡大] 出所:IGS

 ちなみに、連載「LIBリサイクルの水熱有機酸浸出プロセス開発の取り組み」の第1回でである「リチウムイオン電池の基礎知識とリサイクルが必要なワケ」が4位にランクインしました。

 本連載では東北大学大学院 工学研究科附属 超臨界溶媒工学研究センターに属する研究グループが開発を進める「リチウムイオン電池リサイクル技術の水熱有機酸浸出プロセス」を紹介しています。第1回ではリチウムイオン電池の基礎知識やリサイクルが必要な背景などを取り上げています。同連載では、グリーン溶媒と水熱条件の基礎知識や著者の研究室で利用している流通式水熱装置、環境にやさしいクエン酸などを用いた水熱有機酸浸出の事例、リチウムイオン電池の完全循環システム構築に向けた取り組みなども紹介していますので、併せて読んでみてください。

⇒ リチウムイオン電池リサイクル技術の水熱有機酸浸出プロセスのバックナンバー

 加えて、「日本電気硝子が全固体ナトリウムイオン二次電池のサンプル出荷を開始」の記事が5位に、「全固体電池を用いた系統用大容量高性能蓄電池システムの販売を開始」の記事が6位に、「全固体ナトリウムイオン二次電池の大型と高密度のタイプを開発、現状の課題とは?」の記事が7位にランクインしていることから、電池関連の記事が多くの読者に読まれました。

ベスト3位以外のオススメ記事

 ベスト3に入らなかった中から、(編集担当にとって)興味深い記事も紹介しましょう。それは第10位に入ったリチウムイオン電池からのレアメタル回収に新技術、無機酸や有機溶媒を使わない」です。

 この記事は、自動車の排ガス触媒やリチウムイオン電池から環境に優しく高効率にレアメタルを回収できる「イオン液体」と「深共晶溶媒」を開発した九州大学大学院 主幹教授の後藤雅宏氏に、両溶媒の開発背景やこれらを用いた溶媒抽出法のプロセスおよび成果、今後の展開と課題についてインタビューしています。

 現在、国内では中間処理業者が回収した自動車の排ガス触媒(マフラーに装着した触媒コンバーターなど)やリチウムイオン電池の一部はリサイクル会社による分別や解体、選別を経て、粉砕/焙焼され粉末化されています。これらの粉末に対して、多くのリサイクル会社は製錬工程で湿式製錬法の1種である溶媒抽出法を活用しレアメタルを回収しています。

 しかし、現行の溶媒抽出法は大量の有機溶剤や無機酸(硫酸や塩酸など)を用いてレアメタルを抽出するため、環境に優しいとはいえず関連する多くの企業が問題意識を持っています。そこで、後藤氏の研究グループでは自動車の排ガス触媒やリチウムイオン電池から環境に優しく高効率にレアメタルを回収できるイオン液体と深共晶溶媒を開発しました。

イオン液体あるいは深共晶溶媒を用いた溶媒抽出法の特徴[クリックで拡大] 出所:九州大学 イオン液体あるいは深共晶溶媒を用いた溶媒抽出法の特徴[クリックで拡大] 出所:九州大学

 この記事では上記の詳細だけでなく、排ガス触媒が取り付けられた自動車のマフラーが貴金属有価物として高値で取引されており、中国をはじめとするアジア諸国に流れている現状などの問題にも言及しており、かなり興味深い内容だと思いますのでこれを機に読んでみてください。



 以上、2024年のMONOist 素材/化学フォーラム年間記事ランキングでした。素材/化学フォーラムの年間記事ランキングは今回が2回目でしたが、核融合発電、電池材料、半導体材料など幅広い分野の記事がランクインし、とても勉強になりました。これを踏まえて、引き続き、素材開発者や関係する皆さまのお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。2025年もぜひご期待ください! (以下、ランキング再掲)


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