ラムリサーチは、極低温絶縁膜エッチング技術の第3世代である「Lam Cryo(ラムクライオ) 3.0」を開発した。
米国カリフォルニア州に本社を構えるラムリサーチの日本法人は2024年8月22日、神奈川県内で記者会見を開き、極低温絶縁膜エッチング技術の第3世代である「Lam Cryo(ラムクライオ) 3.0」を開発したと発表した。この技術は、メモリセルを平面だけではなく垂直にも配列した3次元構造のNAND型フラッシュメモリ「3D NAND」のエッチングで役立ち、3D NANDの量産でも既に採用されている。
ラムリサーチは1980年に米国カリフォルニア州で設立された半導体製造装置メーカーで、米国、オーストリア、マレーシア、韓国、台湾、北米、アジア、欧州の各拠点に製造工場を有している。
ラムリサーチの日本法人でRegional Technology Group Managing Directorを務める西澤孝則氏は「2014年に米国の半導体メモリメーカーは3D NANDの製造をスタートした。その中で、ラムリサーチは3D NANDのメモリホール加工でリーダーシップを確立してきた。2019年には、極低温絶縁膜エッチング技術の第1世代である『Lam Cryo 1.0』の量産対応を開始した他、当社のメモリホール加工技術を備えたドライエッチング装置の稼働台数が全体で3000台に達した。2024年には、当社の極低温絶縁膜エッチング技術であるCryoを備えたドライエッチング装置の稼働台数は7500台以上となっている」と話す。
同社の日本法人は1991年に設立され、主にラムリサーチの半導体製造装置とサービスの輸入や販売を行っている。
近年、世界のAI(人工知能)市場は拡大しており、その規模は2030年までに2兆ドルに達する見込みだ。併せて、さまざまなメーカーがAIを身近に利用できるローカルエッジデバイスの開発も推進している。
一方、ローカルエッジデバイスやスマートフォン、ノートPC、データセンターでデータ保存の用途で利用されている3D NANDでは、大量のデータを処理するAIに対応するために高いデータストレージ量を持つタイプがユーザーに求められている。同時に、3D NANDの記憶容量当たりのコスト「ビットコスト」の削減も望まれている。
これらのニーズに応える製品として、半導体メモリメーカーが開発を進めているのが、酸化膜と窒化膜を交互に重ねた層を1000層以上備えた3D NANDだ。この3D NANDの開発では、高い歩留まりと信頼性を維持しながら、ビットコストを削減するために、高い生産性だけでなく、「垂直スケーリング」「平面スケーリング」「論理的スケーリング」といった3つのスケーリング(微細化)を高精度で行う技術が必要となる。
これらのスケーリングで役立つのがLam Cryo 3.0だ。Lam Cryo 3.0によるメモリホール加工は、深さ10μmに対応し、エッチング速度は通常のドライエッチングプロセスと比べて2.5倍となる。設計で設定された寸法との誤差を表すCD値の最大は108nmで、最低は99nmとなる。「CD値の最大と最低の差は9nmとこれまでのドライエッチングプロセスと比較してかなり小さい」(西澤氏)。
垂直性を表す△CD/Depthは<0.1%と高水準だ。西澤氏は「垂直性(垂直スケーリング)に関しては近年のドライエッチングプロセスと比べて1.6倍で、平面性(平面スケーリング)についてはメモリセル密度の10%向上を実現した。さらに、安定した性能を維持した量産にも対応している」と語った。
また、通常のドライエッチングプロセスと比べて、電力を40%削減できる他、新たに開発した独自のプロセスガスをエッチングに採用することでCO2を90%削減している。
なお、Lam Cryo 3.0は、同社の最新誘電体エッチングプロセス「Vantex Cシリーズ」のチャンバーに搭載されることで最高のパフォーマンスを発揮するが、同プロセスが行える従来品の「Vantex Bシリーズ」や「FLEX」のチャンバーにも搭載できる。
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