2024年3月、8月に協業の検討について説明してきた両社だが、三部氏は経営統合の検討に踏み込んだ理由を次のように説明した。
「今後のモビリティはハードウェアの差別化だけでなく知能化や電動化を中心に在り方が大きく変わっていく。変革をリードするには、特定の分野での協業ではなく、もっと大胆に踏み込んだ変革が必要ではないかという認識を両社で共有した。その実現方法として、経営統合を検討することが合理的ではないかと判断した。経営統合という大きく踏み込んだ関係を前提とすることで、協業の枠組みでは達成できない真の競争力強化を実現できるのではないか」(三部氏)
会見では、「ホンダによる日産への支援ではないかという声がステークホルダーから出ることは想定している」と三部氏が述べた上で、自立した2社であることが経営統合の前提になると繰り返し説明。三部氏は「経営統合の実行に先立って事業体質の強化を確実に進めていきたい。単に持株会社体制に移行するのではなく、それぞれが現在取り組んでいる事業を着実に進めて強固な事業体質を築き上げていくことが不可欠だ」と述べた。
日産自動車は事業構造改革のターンアラウンドに取り組むが、ホンダは「HEV(ハイブリッド車)や二輪車を中心に収益基盤の強化は実現できている。電動化や知能化の仕込みも進めている」(三部氏)と数歩進んでいる。
「資本の適正化も課題だったが、ここ数年株主還元を強化してきた。今回、さらなる株主還元の強化と自己資本の適正化を目的に1兆1000億円の自己株式取得を決めた。今後、機動的な自己株式取得が制限されることも踏まえて、今できる最大限の自己株式取得をしていく。このレベルでも少し足りない。ただ、ここまでやっても財務基盤の強さは十分あり、将来の稼ぎの仕込みも完了している。これで十分やっていけるという自信の表れだと受け取ってもらって構わない。確実な収益基盤の下で自己資本を適正化したホンダと、ターンアラウンドで事業基盤を確立した日産自動車……自立した2社が統合し、三菱自動車も加われば、3社の総力で電動化や知能化を進めて企業価値を高めていくことができる」(三部氏)
内田氏は「自主的な事業構造改革を断念しているということは一切ない。ターンアラウンドでは、2026年度に350万台レベルの販売台数でも利益が出るような会社に再生していく。その道筋をつけることが私の責務だ。ターンアラウンドの推進によって2025〜2026年にどのくらいの財務的なメリットが出てくるのかを含めてホンダにきちんと伝えたい」とコメントした。
日産自動車のターンアラウンドでは、2024年度と比較して固定費を3000億円、変動費を1000億円それぞれ削減する目標だ。ただ、三部氏は「これらの削減が達成されたかどうかは経営統合の判断基準にしない」と説明した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.