高価な有限要素法ソフトを用いずに、接触要素なし、線膨張なし、単品解析で開口するかどうか調べる方法を試してみましょう。図5に境界条件を示します。
「単品解析でやろう」というところがポイントです。表1にそれぞれの境界条件を説明します。
No. 色 | 位置 | 荷重値/拘束条件 | 目的 |
---|---|---|---|
1.橙 | ボルト穴エッジ:上側 | ボルト軸力 | 初期締結力を反映させる |
2.青 | ボルト穴エッジ:下側 | Z方向変位拘束 | 開口あり/なしを調べる |
3.赤 | 荷重位置 | 被締結体の作用する荷重 | 荷重を印加する |
4.緑 | 被締結体の端のエッジ | Z方向変位拘束 | 被締結体と他の部品の接触面のうち、連載第17回の図6に示したように、必ず接触するであろうエッジを拘束する |
5.青 | 被締結体のどこか | X方向、Y方向拘束 | 被締結体の剛体変位を防止する |
表1 境界条件 |
境界条件の設定が少し面倒ですが、接触要素を使うよりもかなりましです。解析結果を図6に示します。
ボルト穴の下側エッジが変位拘束されていることがよく分かります。変位拘束されている節点には反力が発生しています。連載第3回で行列計算をしましたが、連載第3回の式14で求まる量が反力でした。開口判定位置であるA点の開口の有無の判定方法としては、A点の反力の符号を見ることが分かりやすいと思います。
図7に拘束位置の反力の方向による開口あり/なしの判定方法を示します。
ボルト軸力による反力は上向き(プラス)で、荷重による反力は下向き(マイナス)なので、軸力と荷重が同時に作用したときの反力はそれらの和となります。“和”といっても片方がマイナス値なので引き算することになります。
図7の上段は、荷重判定位置(A点)の反力が上向きなので「A点は下方向に動きたいのだけど、変位拘束によって動きが止められている」と考えれば、A点は開口しないと考えることができます。
一方、図7の下段は、荷重判定位置(A点)の反力が下向きなので「A点は上方向に動きたいのだけど、変位拘束によって動きが止められている」と考えれば、A点は開口すると考えることができます。
以上の考察から、拘束点のボルト軸方向反力を解析結果から読み取ることで開口の有無を判断できます。
もう1つの開口有無判断方法を述べます。反力を読み取れない有限要素法ソフトの場合です。図8にボルト軸方向応力分布を示します。
図8左図に示す大きな荷重の場合のA点に注目します。もし、A点が変位拘束されていなかったら変形状態から判断してA点は浮き上がるでしょう。つまり、図8左図は開口する条件です。図8右図ではもしA点が変位拘束されていなかったら、変形状態から判断してA点は沈み込むでしょう。つまり、図8右図は開口しない条件となります。図8左図と同右図の違いはA点の応力値の符号で、左図のA点は引っ張り応力(プラスの応力)、右図のA点は圧縮応力(マイナスの応力)です。
A点の応力がちょうどゼロとなる荷重が、開口するギリギリの荷重となります。
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