曲面と曲面との交差部にフィレットを付けるという操作は今は簡単にできますが、コンピュータが非力だったときはかなり難しい操作でした。一方、メタボールはというと、式9は連続関数で2回微分可能なので、フィレットは自動的に出来上がり、曲面の連続性は常に保証されます。非力なコンピュータでも図29左図のような感じの絵ができました。また、密度を定義する関数は連続関数である必要はなく、工夫をすると角がとがった形状のものをプニュっとつなげることができます。数学的な操作は単なる足し算です。図29右図はこの例です。これと同じものを今の3D CADでモデリングするには少し時間がかかりそうです。
メタボールの良い点を説明しましたが、あと1つあります。図30はセロハンを重ねた状態です。
重ねたところが濃くなっています。色の付いた透明体を表現するときは図31に示すように透明体の中を光が進んだ距離を計算する必要があります。光の減衰率は光が透明体を通過した距離によって決まります。距離が1[cm]のとき、光は0.5倍に減衰するとすると(セロハン1枚)、距離が2[cm]のときは0.25倍(セロハン2枚)、3[cm]のときは0.125倍(セロハン3枚)に減衰しますね。
昔のソリッドモデラーでは面欠落がたまにありました。図31右図は面が1つなくなった状態です。このような場合は光の減衰率が計算できなくなります。一方、メタボールの場合は原理的に面欠落状態とならないので、この問題は回避できます。図32はメタボールによる例です。透明体の計算が安心してできました。
かなり話がそれましたね。あと1回で終わりますからご容赦ください。最終回は本連載を総括します。お楽しみに! (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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