日本特殊陶業と産業技術総合研究所(産総研)は、新規焼結助剤を活用しサマリウム-鉄-窒素系焼結磁石を高密度化および高性能化できる技術を開発した。
Niterraグループの日本特殊陶業と産業技術総合研究所(産総研)は、産総研内の日本特殊陶業-産総研カーボンニュートラル先進無機材料連携研究ラボで、新規焼結助剤を活用しサマリウム-鉄-窒素(Sm2Fe17N3)系焼結磁石を高密度化および高性能化できる技術を開発したと発表した。Sm2Fe17N3系焼結磁石は、焼結密度を向上させることが難しく、難焼結材料として知られている。
両者は、2022年4月1日に日本特殊陶業-産総研カーボンニュートラル先進無機材料連携研究ラボを設立し、同ラボ内でSm2Fe17N3系焼結磁石の開発に着手した。
産総研は、高加圧電焼結法を用いたSm2Fe17N3の焼結と低酸素粉末治金を用いて、保磁力の低下がないSm2Fe17N3焼結磁石の作製といった研究テーマに取り組んでおり、知見やノウハウを蓄積している。これらを日本特殊陶業が持つセラミックス焼結技術と粉体/粉末治金技術と組み合わせ、Sm2Fe17N3焼結磁石の開発に共同で取り組んできた。
今回の研究では、難焼結材料として知られるSm2Fe17N3粉末を数μmサイズに粉砕したものを低酸素粉末冶金プロセスにより高密度化させることに成功し、永久磁石としての特性向上に成功した。
これまで、Sm2Fe17N3を低温で緻密化することを目的に、低融点金属である亜鉛(Zn)を焼結助剤として用いる試みがなされてきたものの、Znが磁石相と反応して大幅な磁化低下を引き起こし緻密化の効果を相殺してしまうため、有効な手段とはならなかった。
そこで、今回の研究では新たな焼結助剤の探索を行った。特に、従来あまり検討されていなかった周期表第二族に属する元素を含有する合金に着目した。その結果、低温で緻密化が可能かつ磁化低下を引き起こさない合金を発見。この焼結助剤合金は展延性を有するため微粉化は困難だが、粉砕条件を最適化することで微粉化を実現しました。
その適切に微粉化された焼結助剤合金とSm2Fe17N3粉末を均一に混合した混合粉末を、結晶の向きを一方向にそろえるようにして焼結するプロセスを開発し、このプロセスを用いて高密度化したSm2Fe17N3永久磁石を作製することに成功した。
焼結助剤なしの場合は、Sm2Fe17N3粒子同士が寄せ集まっているだけで、多くの空隙が残存するが、新たに発見した合金を添加した場合はその空隙が大幅に低減され、緻密化が促進されていることが判明している。
さらに、今回のプロセスと焼結助剤によって、Sm2Fe17N3永久磁石の残留磁化が10%以上向上し、最大エネルギー積が20%以上向上することにも成功した。
今後は、磁石性能をさらに高めるために、原料となるSm2Fe17N3磁粉の開発や配向性向上のためのプロセス設計を実施することを検討している。
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