設計者の視点であれば「部品を固定するならボルトが手っ取り早い」と思われるでしょうが、保全の立場からすると「メンテナンスのたびに工具(ツール)を使う必要があるのか……」と嫌がられてしまうことがあります。なぜなら、
といったように、意外と煩雑な作業になるからです。
メンテナンス時のボルトの作業について、筆者の経験上、工業製品の生産現場では比較的受け入れられやすい傾向ですが、食品業界などでは受け入れられにくい印象です。その背景には、
といった食品業界ならではの事情があります。
そのため、メンテナンス頻度の高い箇所の固定については、「クランプレバー」や「サムターンクランプ」などのように、工具を使わずに扱えるものが好まれます。
ちなみに、これを逆に応用して、装置の構造に詳しいエンジニア以外の人がむやみにメンテナンスしない/できないように、設計上、あえてねじの場所を隠したり、特殊工具を要するねじを用いたりするケースもあります。
設備によっては、部品の取り付けの取り合いを調整したり、部品の平面度の精度が悪かったりする場合に「シム」を用いることがあります。
しかし、シムの採用はメンテナンス性との相性がよくありません。なぜなら、シムは一般的に、1箇所に付きさまざまな板圧のシムを複数枚挟んで使用するケースが多く、シムの挿入箇所が複数に及ぶこともあるからです。また、シムは非常に軽くて薄いため、破損や紛失しやすい部品でもあります。
このような性質があるため、メンテナンス部品にシムが採用されていた場合、
といった作業が発生し、非常に煩雑になるのです。
特に、メンテナンス頻度の高い箇所にシムが採用されていると、メンテナンスのための設備停止時間が長引きやすくなるだけでなく、シムに関するトラブル(組み合わせ方や挿入箇所のミスなど)も招きやすいため、好ましくありません。そのため、シムの採用は、“どうしてもそれ以外に対策ができない場合などの最終手段”として考えておくのがよいでしょう。 (次回へ続く)
りびぃ
「ものづくりのススメ」サイト運営者
2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2022年から機械設計会社で設計職を担当している。
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