ディープラーニングを基にしたAIを活用して外観検査を行うには、不良の画像を多数収集してモデルに学習させておく必要がある。ただし、不良の発生が少ない場合や、生産ラインを立ち上げて間もない場合など、不良品画像を十分に集められないことも少なくない。
京大発のスタートアップであるデータグリッドは、生成AIを活用して不良品画像を作成し、画像不足の課題を解決する「Anomaly Generator」を出展した。2023年にリリースしたクラウドベースのソリューションである。
ダッシュボードから、不良部の大きさ、形状、角度、エッジ位置などを設定できる他、不良モードごとにアノテーションも行える。画像生成AIとしては拡散法やGAN(敵対的生成ネットワーク)など4種類が用意されていて、対象の不良に応じて使い分けが可能だ。
既に金属部品や鋼材の検査を中心に採用されていて、住友電工、日本精工、豊田自動織機などが顧客に名を連ねている。例えば、ベアリングの検査では、従来は21%の見逃しがあったのを5%に低減、飲料ボトルの外観検査では9%の見逃しを3%に低減、といった実績があるという。
初出展の2020年創業のFastLabel(ファストラベル)は、「AIの精度はデータの質で決まる」という方針の下、データセットの収集/販売、アノテーション代行、アノテーションツール、データコンサルティングなどを提供している。
既に100社以上の顧客を獲得しており、デンソーのミニトマトの収穫ロボットを対象にトマト画像のアノテーション代行を実施し、認識精度の30%向上を実現したという。また、鹿島建設にアノテーション代行サービスとアノテーションツールを提供し、建設現場の安全管理を実現するAIシステムの開発速度を10倍に向上した。
その他、サイバーエージェントの日本語LLMの開発やソニーネットワークコミュニケーションズの画像認識アプリ開発などでの実績があるという。
FastLabelの強みの一つが自社開発したツールである。効率的かつ自動的なアノテーションを実現する機能や、データマネジメント機能、学習/評価データを自動的に生成する機能、担当者が適切なアノテーションスキルを持っているかどうかを確認する「オンボーディングテスト」機能などを備え、ブースでこれら機能のデモを行っていた。こうした取り組みを通じて、国内AIアノテーション領域でトップシェアを目指す。
最後に、ユニークな「欠点プロジェクションマッピング」を紹介しよう。参考出展したのは、システムインテグレーションなどを手掛けるパシフィックシステムである。
既存の外観検査システムは、異物や欠陥を発見したときに、ディスプレイに対象物の画像とともに問題箇所を赤枠などで表示するのが一般的だ。作業者が、対象物のどこに欠陥や異物があるかを把握するには、ディスプレイと実物を見比べる必要があった。
同社はプロジェクションマッピングの手法を応用し、検査システムが検出した欠陥や異物の場所を対象物に投映するシステムを試作した。「世の中のニーズを探るために出展した」(同社の説明員)そうだが、取材中に来場者から「こういうシステムが欲しかった」という声も聞かれた。
現時点で製品化は未定だが、顧客のニーズも踏まえながら、欠陥箇所の明確化、不良品を除去する際の作業補助、検査担当者の目視負担の軽減、トレーニングなどに提案したい考えだ。
以上、筆者の目に留まった展示の一部を紹介した。AIや生成AIとの組み合わせによって、外観検査をはじめとする画像センシング技術のさらなる発展が期待される。
なお、主催者発表によると「画像センシング展2024」の入場者数は前回に比べて微増となる1万464人(延べ人数ではなくユニーク人数)で、出展社数は前回と同じ137社であった。次回の「画像センシング展2025」は2025年6月11〜13日にパシフィコ横浜での開催が予定されている。
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