2024年6月12〜14日にパシフィコ横浜で開催された「画像センシング展2024」では、さまざまな画像処理機器やセンシング技術の展示が行われた。特に注目を集めたのが、外観検査との融合が始まった生成AIの活用事例だった。
「画像センシング展」は画像処理機器やセンシング技術を対象にした展示会で、2024年の開催で38回目を数える。カメラやイメージセンサー、照明や光源、画像処理ソフトや解析ソフトなどに加え、近年はディープラーニングを用いた画像認識ソリューションの他、生成AI(人工知能)関連ソリューションも出展され、製品検査やマシンビジョンシステムに携わる担当者を中心に関心も高い。
本稿では、2024年6月12〜14日にパシフィコ横浜で開催された「画像センシング展2024」から、初出展企業を中心に、カメラデバイス、照明機器、生成AIを含むAIソリューションなどを紹介する。
まずは、カメラデバイスを2点紹介しよう。
パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は、2023年1月に発表したハイパースペクトルカメラを展示した。一般的なRGBカメラでは識別が難しいわずかな色の違いも検出できるのが特徴である。
光を多数のスペクトルに区切って撮影する従来のハイパースペクトルカメラは、各画素に入る光の量が特定のスペクトルに限られるために、画像が暗くなってしまうという課題があった。
パナソニックHDは、複数のスペクトルを通す特殊なフィルター(ファブリペローフィルター)をランダムに配置したイメージセンサーを開発。それぞれの画素に複数のスペクトルが入るため画像が暗くなる現象が起こらない。各スペクトルの分離は後段のソフトウェアで処理する。
展示されたLUMIXブランドのハイパースペクトルカメラは、解像度が4Kと高く、自動露出や自動フォーカスなどの機能を備え、マイクロフォーサーズ規格のレンズを装着できる。フレームレートは最高で30fpsである。
同社は、食品業界での鮮度管理、製薬や化粧品における品質管理、フィルム、塗装、めっきなどのムラ検出などに訴求していきたい考えで、2025年度の量産を目指す。
画像センシング展に初出展となったタカハタプレシジョンは、近赤外(NIR)レーザーを規則的なドットパターンで対象物に照射し、その反射をCMOSセンサーで撮影して、対象物の3次元座標を点群として取得するILT 3Dセンサーを出展した。ILTはInvertible Light Technologyの略で、インドのMagic-Eyeが技術を提供している。
レーザー光の反射時間を利用して距離を求めるTOF(Time of Flight)センサーではなく、三角測距の原理を利用しているため、計算負荷が軽量で高速に処理できる点が特徴だ。対象物に動きがある場合でも30fpsで3D点群データを撮影(取得)できるという。
同社は金型製作や射出成型を得意としながら、新しい事業として3Dセンサーに取り組んでいる。これまではAGV(無人搬送車)/AMR(自律搬送ロボット)やロボット分野への提案を進めてきたが、マシンビジョンや見守りなどのアプリケーションへの拡大を図りたいと考え、出展を決めたそうだ。
現在、物流会社と共同で、コンベヤーを流れてくる荷物の寸法をILT 3Dセンサーで高速に計測する実証実験を進めている。また、映像ではなく点群のみを取得するという特性を生かして、プライバシーに配慮が求められる病院や介護現場での見守りにも提案したい考えだ。
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