インターネットに接続されるデバイスの数は2030年までに290億台に達すると予想されている。これらのエッジデバイス上でAI処理を行う「エッジAI」について、進化をけん引する4つの要素や、導入するメリットを解説する。
IoT(モノのインターネット)の戦略的可能性により、エンジニアは大量のエッジデバイスの展開を加速させており、それらのデバイスがインターネットに常時接続しなくてもデータの収集、処理、推論を行っています。企業をはじめとする組織はこれまで、エッジで収集したデータをクラウドに送信し、機械学習モデルで処理していました。これはデータ処理を実行するために必要な計算能力がエッジデバイスに欠けていたからです。より強力なプロセッサとモデル圧縮ソフトウェアの発展により、クラウドベースコンピューティングへの依存度は減少しました。
エッジデバイスは、以前はクラウドで行われていた負荷の高いAI(人工知能)の計算処理を局所的に実行する機能を備えるようになりました。インターネットに接続されるデバイスの数は、2030年までに290億台に達する見込みであり、エッジデバイスでAI処理を行う「エッジAI」のニーズは急激に増加しています。2027年までにエッジデバイスの65%にAIを処理する機能が統合されると予想されています。
エッジAI市場は、2022年の156億米ドルから2029年には1074億米ドルにまで成長すると予想されています。エッジAIは新しい概念ではありませんが、技術の進歩によってその実装はより簡単で経済的になりました。現在、エッジAIの進歩をけん引している原動力は4つあります。
エッジAIによってクラウドベースコンピューティングが不要になるわけではありませんが、急激な増加を続けるクラウドでのデータ処理負荷を軽減する必要があることは明らかです。エッジAIの主な利点は、リアルタイム処理と意思決定にあります。これにより、レイテンシが減少し、電力使用量とクラウド処理に関連するコストが削減されます。データの推論を局所的に実行すると、パブリック、プライベート、またはハイブリッドのクラウドに送信して処理される生データが少なくなります。クラウドサービスは特定の用途に不可欠であり、エッジデバイスでデータの推論を実行することで強化できます。
クラウド上でAI処理を行う必要がないエッジAIは、エッジデバイスのインターネット接続に対する依存度を軽減できることもあり、エンジニアは多くの産業分野でエッジAIモデルをより効率的に実装できるようになります。例えば、次ページで紹介するような、自動車や医療機器の分野における応用が進んでいます。
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