ここまで見てきたように、AMの量産品質保証は、「ちゃんとしたプロセスから生まれたものは、ちゃんとしている」という考えに基づいています。このようにプロセスで品質を保証するのがプロセス保証と呼ばれる品質保証方法です。
プロセス保証はAMだけがとる手法ではなく、一般的に使われる品質保証方法の1つです。特に、航空宇宙分野や医療機器などの品質に厳しい分野や、金型の製造などの1個しか作らないので破壊検査が向かないようなものの製造でよく使われます。(「こわさない」品質保証の方法についてはこちら|テュフズードのウェビナーページ)
AMは他の製造技術より比較的新しい製造技術です。既存の製造技術のように、業界や企業に数十年の経験があるわけではありません。製造についても調達についても品質保証についても、既存の製造技術は数十年、場合によっては数百年ものノウハウの蓄積があります。
AMは3Dプリンタという工作機械を用いてものを作りますが、企業がAM製造という事業を始めることは切削加工メーカーが新しいマシニングセンタを増やしたり、板金メーカーがプレス機を増やしたり、射出成型メーカーが成型機を増やすのとは根本的に異なります。切削メーカーが鋳造炉を導入するくらいの、まったくの新しい事業と捉えた方が良いレベルのことです。
そのため、AM事業を始め、量産品質保証までを達成するのは、まったく新しい技術を使って品質を一から(あるいはゼロから)作り上げる苦労が伴います。
既存の製造技術が数十年、数百年かけて作り上げてきた品質保証のノウハウを、AMもトライアル&エラーを繰り返して構築するとなると、やはり十年単位の期間がかかってしまうでしょう。
そこで、AMの量産部品が早く欲しい調達側が、品質保証されたAM部品を入手できるようにするために、自社がAM部品メーカーからの調達で得た品質保証のノウハウを、AM部品メーカーとともに規格書として標準化し公開することにしました。その規格書が、現在では国際規格ISO/ASTM 52920として、正式発行されています。
今回見てきたように、AM品質保証活動を実際に始めようとすると、やるべきことが多すぎてどこから手を付けるべきか困ってしまうことも多いでしょう。また、自分では抜け漏れなくやったつもりでも、確信が持ちづらいこともあるはずです。そんな時にとても役に立つのが、このISO/ASTM 52920という国際規格です。
この規格には、要求品質を満足するプロセスであるために、あるいは不良の発生と流出を防ぐために
といった要求事項(「ちゃんとしている」というためには、これをやりなさいという事項)が定められています。
今回はAMの品質保証、不良の発生と流出の防止、そのための品質保証活動、AMの品質保証活動でやるべきことがまとめられている規格書がある、というトピックでお話ししました。次回は、「そんなに便利な規格書というものがあるのなら、使った方がお得ですよね」ということで規格のいいところや使い方を見ていきましょう。
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