AMを実製品に活用するためには何から取り組めばいいのか金属3DプリンタによるAMはなぜ日本で普及しないのか(2)(1/2 ページ)

本連載では、何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察する。今回は、AMを実製品に活用するには何からどのように取り組めばいいのかについて考える。

» 2023年06月02日 11時00分 公開

 前回はAdditive Manufacturing(アディティブ・マニュファクチャリング。積層造形、以下、AM)が実製品活用されない国内事情に関して記載しました。今回は、AMを実製品に活用するために、何からどのように取り組めばいいのかを考察します。

目的のない情報収集のための情報収集から脱却

 現在の国内企業の多くが慎重かつ安定的な経営を重視する中、AMへの期待はあってもビジネス(利益)が明確に見えない状況で、AMに対して大きな費用と時間の投資ができるのでしょうか。いつ、どのように利益が見込まれるのか判断しづらい国内において、AM実製品活用ビジネスへの対応は、越えるべきハードルがあまりにも大きいと感じることでしょう。

 そこでAMの活用を諦めてしまう選択肢もありますが、ほとんどのモノづくり企業は海外の事例や技術情報を入手する中で、将来におけるAM導入の必要性は認識されていると思います。AM関連の展示会や説明会、セミナーが盛況なのは、その表れだと考えます。

 AMの展示会やセミナーに参加していれば、将来に向けて準備をしているように思え、会社もそれらへの参加を容認し、AM活用ビジネスの創出へ企業、社員がともに情報収集に努めているように見えます。

 しかし、展示会などイベント来場企業のほとんどの方が、目的を持たないAMの情報収集をするための来場であることは間違いありません。目的を持たないというより持てないのは、AMによる具体的なビジネスが見えないことが原因なのは、言うまでもありません。「百聞は一見に如かず」と言いますが、もう10年近くも情報収集ばかりを行っている状況から、われわれはいつ、どのように、AM実製品活用へ具体的に進むことができるのでしょうか。

 例えば、下記のような点を注意していただくだけで、AMへの取り組み方が従来と異なってくるはずです。

具体的(AMで造形したい製品)テーマを持っての情報収集

 国内のAM関連イベントでは、参加者のほとんどが目的を持たない単なる情報収集目的であることは前述の通りです。AMイベントへの参加時に単なる情報収集から、AMで造形したい製品、形状など具体的テーマを持った参加に変えてください。

 おそらく初めは「その設計形状では、AMでのメリットが出ない」というような否定的回答が説明員から返ってくることと思います。でもそこから、下記のような具体的な情報交換(相談)をすることによって、AM実製品活用のための具体的理解を深めることができます。

  • どうすれば(どういう形状や用途なら)AMでメリットが出せるか
  • AMの特徴は何なのか
  • AMの欠点(不得意な事)は何なのか

 現工法の装置展示会や説明会では当たり前のように行われている、ユーザーと説明員の間で行われる具体的ビジネスに関わる加工相談の会話が、AMの展示会や説明会ではほとんど行われていないのです。

 一方的にAM関連企業から情報を受けるだけなら、極端な言い方をすればWebサイトや電話の情報収集で十分だと思います。次にAMイベントに参加されるときにはぜひ、具体的AM活用テーマを持って参加してください。

 現工法でのビジネスにおいては情報収集だけの業務でも価値があるかも知れませんが、10年近くにわたりAM実製品活用が進まない国内においては、相変わらず情報収集だけを行う業務は「大きく進んでいる海外のAMに対抗できない業務」と言わざるを得ません。

社内での製造用治具、ツールでのAM活用

 AM実製品活用には大きなハードルがありますが、治具、ツールでのAM活用はモノづくり企業の決断で行える場合が多く、設計試作確認コピー出力用途でAMを使用するよりは、AMの理解を深めることになります。

 製造用治具は、多機能コンパクト化、軽量化が大きなメリットになることは言うまでもありません。しかし、現工法で製作される治具において、それらのメリットを追求することは工数の増加となり製作コスト増につながります。AMにおいて複雑形状や軽量化は、コスト増ではなくコスト減になるので、この点を追求した製造用治具でのAM活用は、AMの特徴を追求する良い機会となります。

 ただし、今までの治具で生産を行えている状況から、AMでの治具に費用と時間をかけて変更するには、社内関係各部門や作業者からの賛同や協力が必要です。

 ツールにおいては早い段階から、内部冷却水管複雑配置金型や、成型加工時のガス抜き用微細多孔穴構造、鋳造用砂型造形には実用されています。これらはAMの特徴(仕様)を生かした(理解した)AM活用方法と言えます。

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