東芝エネルギーシステムズは、CO2分離回収設備に用いる高性能なCO2吸収液「TS-X」の開発が完了したと発表した。
東芝エネルギーシステムズは2024年4月18日、CO2分離回収設備に用いる高性能なCO2吸収液「TS-X」の開発が完了したと発表した。TS-Xは2023年3月〜2024年3月に同社が佐賀市とともに開発を進めてきたものだ。
TS-Xを用いたCO2分離回収設備の実証運転で良好な試験結果を得られたことで、同吸収液の製品化で必要な実証が完了した。今後、同社はTS-Xを活用したCO2分離回収設備の拡販を進める。なお、既存のCO2分離回収設備向けにも吸収液の切り替え時などにおいてTS-Xを販売/供給していく。
同社は、2016年に佐賀市清掃工場(佐賀市高木瀬町)に、清掃工場向けで当時世界初となるCO2分離回収商用設備を納入した。現在、佐賀市清掃工場では、ごみ焼却の際に発生する排ガスの一部から、1日で最大10トン(t)のCO2を分離回収している。
TS-Xの開発に当たっては、この商用稼働しているCO2分離回収設備を用いて、同社エネルギーシステム技術開発センターが開発した同吸収液を活用し、合計8000時間以上の運転を行った。
今回の実証運転では、TS-Xの性能について、現行の吸収液と新吸収液の劣化速度および大気中へのアミン成分排出量について比較を行った。その結果、福岡県大牟田市にある同社製パイロットプラントで約800時間の運転検証を行った際の試験結果と同様に、吸収液の劣化速度は従来の3分の1まで、アミン成分排出量は従来の10分の1程度にまで低減することを確認した。
また、同社製パイロットプラントでもTS-Xの性能試験を並行して行っており、その中で、TS-Xが現行の吸収液に比べ、特に排ガス中のCO2濃度が低い領域で回収エネルギーを低減できることを確かめた。このためTS-Xを用いることで、比較的濃度の低いCO2が排出される天然ガス火力発電向けなどの設備でより効率的にCO2を分離回収することができる。
以前から佐賀市清掃工場のCO2分離回収設備では、排ガスからCO2を分離する際に、低温状態でCO2を吸収し、高温状態でCO2を放出するアミン系の水溶液を吸収液として使用していた。
しかし、同設備は長期間使用するため、事業者からは吸収液の性能向上によるCO2分離回収設備の維持管理費抑制が求められていた。そこで、東芝エネルギーシステムズはCO2回収量1単位当たりの必要エネルギー(回収エネルギー)を現行吸収液と同等に保ちながら、吸収液の劣化度合いを抑えた新吸収液の開発を推進してきた。この開発では、環境配慮の観点から、大気中へのアミン成分排出量の抑制も考慮した。
加えて、吸収液のより効率的な運用を目指し、電気透析によりCO2分離回収後の吸収液に徐々に蓄積される不純物を選択的に除去して浄化する「電気透析法」について、2024年4月から佐賀市と共同で研究を開始した。
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