1000℃の熱処理後も結晶粒が微細で均一な無酸素銅を開発材料技術

三菱マテリアルは、高性能無酸素銅「MOFC」シリーズのラインアップに、1000℃の熱処理後も微細で均一な結晶粒を維持できる新素材「MOFC-GC」を追加した。導電率や熱伝導率にも優れ、板厚0.3〜1.2mmの範囲で提供可能だ。

» 2025年07月16日 11時00分 公開
[MONOist]

 三菱マテリアルは2025年6月25日、高性能無酸素銅「MOFC」シリーズのラインアップに、1000℃の熱処理後も微細で均一な結晶粒を維持できる新素材「MOFC-GC」を追加したと発表した。同素材を採用することで、電子部品やモジュールなどの品質向上、工程安定化が期待される。

 電気自動車などに用いられるパワーモジュールは、半導体素子が発する熱を放熱するため、回路層に無酸素銅を採用するAMB基板が使われることが多い。製造にはセラミックスと無酸素銅の加熱接合が必要になるが、従来は熱処理で結晶粒が粗大化して不均一組織を生成してしまい、AMB基板の品質ばらつきや性能に影響を与えていた。

キャプション AMB基板の製造工程[クリックで拡大] 出所:三菱マテリアル

 そこで同社は、高品質な無酸素銅の製造技術と、独自の材料設計や特許技術を活用することで、1000℃の高温加熱後も微細で均一な結晶組織を維持できるMOFC-GCを開発した。各種温度域で熱処理した後も、結晶粒径が微細で、ばらつきが極めて少ないことを確認できた。

キャプション 「MOFC-GC」と従来の無酸素銅との結晶組織比較[クリックで拡大] 出所:三菱マテリアル
キャプション 「MOFC-GC」の各種温度域での熱処理後の結晶組織[クリックで拡大] 出所:三菱マテリアル

 MOFC-GCは、結晶粒成長抑制性能が高く、導電率101%IACS、熱伝導率391W/m・Kの無酸素銅C10200と同程度の特性を有する。板厚0.3〜1.2mmの範囲で提供可能だ。

 AMB基板など、セラミックス基板の回路層材料として利用すれば、光学認識性の向上、表面粗さの低減、めっき外観改善が見込める。また、接合界面の超音波による画像検査性の向上、基板反りの安定化、耐ヒートサイクル性能の向上、ワイヤーボンディング接合強度不足の解消、半導体素子のはんだ付けや焼結材接合のばらつき低減などが期待できる。

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