ピエクレックスと村田製作所は共同でRFIDの技術セミナーを開催。RFID技術の紹介や2025年大阪・関西万博で販売している”洗濯可能なRFIDタオル”における技術的な工夫などについて説明した。
ピエクレックスと村田製作所は2025年7月4日、東京都内でプレス向けに「RFID技術セミナー」を開催した。
総合電子部品メーカーである村田製作所は、グローバルでチップ積層セラミックコンデンサーや高周波インダクターなどの電子部品を展開しており、高いシェア率を有している。特にショックセンサー、セラミック発信子はシェア率90パーセントと高い。近年はRFID技術の展開にも注力している。
RFIDとは、一般的にICタグを使い、無線通信によってモノを識別/管理するシステムであり、主に公共交通機関や電子マネーの支払いに使用するICカードなどで活用されている。
RFIDにおける通信の手順は、データ処理PCがリーダー/ライターを経由して無線波を飛ばし、その無線波をRFIDタグが受信してタグ内のICチップが起動し、ICチップに保存されている情報を信号でリーダー/ライターに返信する。リーダー/ライターは受信した信号を解析して情報を読み取る。読み取られた情報は、リーダー/ライターを介して、上位のシステムに処理される。
このように、電波と磁界結合を用いて物体を識別し、ICチップのメモリに読み書きを行うため、バッテリーが不要で寿命が長い。RFIDのメモリは、チップ製造時に書き込まれ、タグ固有で重複しない「ユニークID」を備えている。ユニークIDは書き換えできないため、QRコードなどの印字タイプと比べて複製が難しい。さらに、ユーザーが自由に読み書きできる領域「ユーザーメモリ」も備えている。ユーザーメモリを活用することで、利用者がタグを読み取ったら任意のURLに遷移させたり、URL情報にユニークIDをひも付け個別のWebページに飛ばして分析も行える。各メモリ領域には、意図しないアクセスや書き込みを防ぐためのロック機能もある。
RFIDの種類は大別すると、周波数が135KHz未満のLF帯向け、13.56MHzのHF帯向け、860〜960MHzのUHF帯向け、2.45GHzのマイクロ波帯向けの4つだ。各タイプは、通信方式や通信範囲、金属や水の影響、用途などが異なる。
商品の棚卸や工程管理、入出荷の記録などではRFIDの活用による業務改善が期待されている。一例を挙げると、製造工程の初期段階からRFIDタグを部品に取り付けることで、通過した工程やラインを可視化できる。
ピエクレックスは村田製作所の100%子会社で、村田製作所の圧電技術と帝人フロンティアの化学繊維技術を組み合わせて開発した圧電繊維「PIECLEX(ピエクレックス)」を展開している。
PIECLEXは、植物由来のポリ乳酸を原料とし、物質に力が加わると電圧が生じる現象「圧電効果」で電気を発生する。繊維が動くたびに電気を生じ、菌の増殖を抑える抗菌効果を発揮する他、電界は繊維内部にとどまり、人体にほぼ影響なく、静電気と異なり感知もできない。
加えて、微細物によって分解される「生分解性」も有する。この生分解性を生かし、ピエクレックスは循環インフラ「P-FACTS(PIECLEX Fabrics Composting Technology Solution)」の展開を進めている。P-FACTSは、植物由来のポリ乳酸を原材料にPIECLEXを製造し、それを衣料品などの生産に使い、この衣料品を一般消費者が購入し廃棄した後、回収して堆肥化し、堆肥を植物の栽培に利用して、成長した植物から抽出したポリ乳酸をPIECLEXの材料に活用する。
ピエクレックス 経営管理部 ブランディングチーム マネージャーの井上貴文氏は「国内では年間79.8万トン(t)の衣料品が供給されており、そのうち48.5万tが廃棄されている。48.5万tのうち24万tは古着として輸出され、多くの流通拠点を経て、最終的にはアフリカなどの途上国に送られ、野焼き処分などがされている。これにより、CO2が発生し、大気を汚染している。こういった問題を解決する一助として、P-FACTSを展開している」と警鐘を鳴らす。
両社は、村田製作所のRFID技術やPIECLEXを活用するとともに、大阪府泉南市に本社を構えるタオルメーカーである成願と協力し、「思い出を紡ぐピエクレックスRFIDハンドタオル/フェイスタオル」を開発した。
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