TBMは、スイス東部のダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」で、カーボンリサイクル技術を使用した「次世代LIMEX」を発表した。
TBMは2024年1月19日、スイス東部のダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」(2024年1月15日〜19日:現地時間)で、カーボンリサイクル技術を使用した「次世代LIMEX」を発表した。
これまでのLIMEXは豊富で枯渇リスクが少ない石灰石由来の炭酸カルシウムを材料に使用している素材だ。同素材は、石油由来のプラスチック使用量とライフサイクル全体でCO2の排出量を減らせるプラスチックの代替素材としてだけでなく、水の消費量を減らせる紙の代替素材として、既に1万以上(事業所数含む)の企業や自治体などに採用されている。
一方、次世代LIMEXは、石灰石由来の炭酸カルシウムに代わり、排ガス由来のCO2と、工場から排出されるカルシウム含有廃棄物を低環境負荷のプロセスで化学合成したものだ。
カーボンリサイクル技術を使って大気や排ガス由来のCO2を吸収/固定して作る炭酸カルシウムを主原料にすることで、プラスチック代替品を製造する際に、従来の石油由来のプラスチック製品と比較して、石油由来プラスチックの使用量や、ライフサイクル全体でのCO2排出量を減らせる。
CO2を固定したまま、繰り返しリサイクルすることも可能だ。カルシウム含有廃棄物を素材の原料に使用することで、再生利用による資源の有効活用にも貢献する。
カーボンリサイクル技術を使って化学合成した炭酸カルシウムをLIMEXに適用する際には、粒子形状やサイズをデザインし、コントロールすることが重要になる。そのため、TBMでは、カーボンリサイクル技術を使用した素材開発に関する国内特許を取得している。なお、LIMEXの開発を通じて、世界40カ国以上で200件以上の特許も登録した。
次世代LIMEXの開発に当たっては、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「地域に眠る技術シーズやエネルギー・環境分野の技術シーズ等を活用したスタートアップの事業化促進事業」に採択された他、東北大学とも共同研究を実施してきた。
さらに、世界経済フォーラムの「Unicorn Community(ユニコーン・コミュニティー)」の一員として参加したダボス会議で、次世代LIMEXのプロトタイプとなる射出成形製品やシート製品の試作品を発表した。
次世代LIMEXの用途は、産業用フィルムや食品パッケージ、ラベル基材など、産業資材から身近な消費財までと、従来のLIMEXと同様に付加価値が高いさまざまな製品に使える。
次世代LIMEXのブランドロゴは全体のフォルムをXとする。このフォルムには、LIMEXのコンセプト「無限の可能性を持っている」の継承と、日本発の環境配慮型新素材として、さらに進化したLIMEXとしてブランディングを推進するという意味が込められている。
今後、TBMは、今回発表した次世代LIMEXの量産を目指すと同時に、副原料である樹脂部分を従来の石油由来のものではなく、植物由来の樹脂やリサイクル樹脂とすることで、環境負荷を低減した素材の開発を推進していく。
世界エネルギー・環境イノベーションフォーラム(ICEF)の予測では、カーボンリサイクル技術を使ってCO2を原料として作る製品の市場規模は、2025年に2975億ドル(約40兆円)、2030年に8370億ドル(約120兆円)まで成長し得るとされている。
日本政府でも2050年のカーボンニュートラル目標の実現に向けて、2023年に「カーボンリサイクルロードマップ」を策定し、カーボンリサイクルの一層の普及促進を掲げている。さらに、カーボンリサイクル技術による、2050年時点での最大CO2リサイクル量(国内利用されるカーボンリサイクル製品相当)を、最大で約1億〜2億トンと試算している。
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