CoolSiC MOSFET G2は2024年3月から、産業グレードと車載グレードの両方で展開が始まっている。産業グレードはディスクリート、車載グレードはモジュールの提供が先行している。
産業グレードのディスクリートについては、2024年3月に耐圧650V品の3品種と耐圧1200V品の1品種を発売済みだ。今後は2024年半ばから2025年前半にかけて計8品種を追加する計画である。CoolSiC MOSFET G1と違うのは、耐圧400V品と高効率の上面冷却が可能なTSC品の追加だろう。
耐圧400V品は、これまでSiC-MOSFETが採用されてこなかった分野への展開拡大や、マルチレベルインバーターなどへの適用を想定したものだ。TSC品は、インフィニオンとしてスーパージャンクションMOSFETなどで採用してきた技術をSiC-MOSFETにも横展開することになる。耐圧1200V品のCoolSiC MOSFET G2を用いたサーボモーターの駆動回路で比較すると、IMS(絶縁金属基板)ボードが必要になる通常の下面冷却パッケージ品に対して、TSC品は熱抵抗を65%削減できるという。もちろん、製造コストも容積も削減可能だ。
インフィニオンは、CoolSiC MOSFET G2を含めたSiCデバイスの事業拡大に向け生産能力を大幅に増強するための投資も行っている。現在の主力工場は、オーストリアのフィラッハの6インチ(150mm)ウエハーラインだが、マレーシアのクリム工場に8インチ(200mm)ウエハーラインを建造中である。クリム工場では、2022年2月発表のフェーズ1の投資金額は20億ユーロ以上となっていたが、2023年8月発表のフェーズ2ではさらに最大50億ユーロを投資するとしている。
マッティウッシ氏は「フェーズ1はまず6インチウエハーラインを立ち上げることになるが、その後は8インチウエハーラインを建設していく。既存の6インチラインも8インチに転換することになるだろう」と説明する。なお、量産開始時期はフェーズ1が2024年後半、フェーズ2が2027年夏となっている。フィラッハ工場とクリム工場における8インチラインへの転換を含めて、2030年のSiCデバイスの売上高は、2025年の7倍に当たる70億ユーロまで成長する見込みである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.