三菱電機がxEV用パワー半導体モジュールの新製品、SiC-MOSFET前提に設計刷新ネプコンジャパン2024(1/2 ページ)

三菱電機がEVやPHEVなどxEVのモーター駆動に用いるパワー半導体モジュールの新製品「J3シリーズ」について説明。同社の車載パワー半導体モジュールの量産品として初めてSiC-MOSFETを搭載しており、従来品と比べてモジュールサイズを60%削減するなどモーターを駆動するインバーターの小型化に大きく貢献できる。

» 2024年01月25日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
三菱電機の楠真一氏 三菱電機の楠真一氏

 三菱電機は2024年1月24日、東京都内で会見を開き、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)などxEVのモーター駆動に用いるパワー半導体モジュールの新製品「J3シリーズ」について説明した。同社の車載用パワー半導体モジュールの量産品として初めてSiC(シリコンカーバイド)デバイスであるSiC-MOSFETを搭載しており、SiC-MOSFETに最適な設計を採用して従来品と比べてモジュールサイズを60%削減するなどモーターを駆動するインバーターの小型化に大きく貢献できる。同年3月25日からサンプル出荷を順次開始する予定だ。「競合他社の同じ定格容量のパワーモジュールと比較しても最小クラスであり、エネルギー密度もベストのレベルにある」(同社 半導体・デバイス事業本部 半導体・パワーデバイス第一事業部長の楠真一氏)という。

 同社は1997年に世界初となるハイブリッド車向けへの供給を皮切りにxEV用パワー半導体モジュールの出荷実績を積み重ねてきた。2022年までに累計2600万台以上のxEVのパワートレインに搭載されているという。製品ラインアップとして、鉄道や産業機器などに用いられているのと同じケースタイプの他に、独自のT-PM(トランスファーモールド型パワーモジュール)を追加することで顧客のさまざまな需要に応えてきた。

三菱電機のxEV用パワー半導体モジュールの出荷実績 三菱電機のxEV用パワー半導体モジュールの出荷実績[クリックで拡大] 出所:三菱電機
xEV用パワー半導体モジュールの歴史 xEV用パワー半導体モジュールの歴史[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 今回発表したJ3シリーズは、2in1結線で構成したパワー半導体モジュールとなる「J3-T-PM」を基本構成要素として、これまでケースタイプで提供してきた6in1結線で構成するパワー半導体モジュールについてはJ3-T-PMを3個搭載する「J3-HEXA-S」、6個搭載する「J3-HEXA-L」で対応する。これまで分かれていたT-PMとケースタイプを融合したことになる。

「J3シリーズ」の特徴 「J3シリーズ」の特徴[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 基本構成要素となるJ3-T-PMは、新たに採用するトレンチ型SiC-MOSFETの搭載を前提に設計することで、従来品の「Jシリーズ」と比べて樹脂部の体積比較で約60%削減することに成功した。ただし、ここまで小型化するとより放熱性能を高めないと動作に不具合を起こす可能性が出てくる。そこで、これまでグリスを用いていた冷却器との接続について、はんだ接合を可能にすることで熱抵抗を約30%削減し、十分な放熱性能を確保した。

「J3-T-PM」はモジュールサイズを60%削減し、はんだ接合で熱抵抗を約30%削減している 「J3-T-PM」はモジュールサイズを60%削減し、はんだ接合で熱抵抗を約30%削減している[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 また、インバーターの高周波駆動で低減することが求められるインダクタンスについても、Jシリーズと比べて約30%削減できているという。複数T-PMを搭載するJ3-HEXA-SやJ3-HEXA-Lでは、さらなるインダクタンス低減が可能だ。例えば、従来品のJシリーズのT-PMを用いたインバーターと比較すると、J3-HEXA-Sは60%、J3-HEXA-Lは65%の小型化が可能になる。J3-HEXA-Lの場合はアルミフィンと組み合わせることで、ケースタイプ製品であるJ1シリーズよりも熱抵抗を20%削減できるという。

「J3-T-PM」を複数組み合わせた「J3-HEXA-S」や「J3-HEXA-L」で大幅な小型化や熱抵抗の削減が可能になる 「J3-T-PM」を複数組み合わせた「J3-HEXA-S」や「J3-HEXA-L」で大幅な小型化や熱抵抗の削減が可能になる[クリックで拡大] 出所:三菱電機
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