J3シリーズはSiC-MOSFETの搭載を前提とした設計になっているものの、Si(シリコン)パワーデバイスであるRC-IGBT(逆導通IGBT)を搭載する製品もラインアップしている。楠氏は「xEVの市場が急拡大して行く中で顧客のニーズも多様になっている。そこで、基本構成要素である2in1のJ3-T-PMのパッケージを共通として、SiC-MOSFETだけでなくRC-IGBTもラインアップすることでさまざまな顧客のニーズに対応できるようにした」と説明する。
xEVの中でも市場拡大の勢いが著しいのはEVであり、そこで求められる性能は効率や電費、走行距離などだ。既存のインバーターのパワーモジュールをSiデバイスからSiCデバイスに置き換えることで、走行距離はおおむね5〜10%伸ばせるとみられる。今回、J3シリーズの開発で三菱電機が重視したのは、インバーターの小型化やEVの走行距離を伸ばすことだけでなく、顧客がさまざまな車種展開をしていく上で必要とする要件に応えられるパワー半導体モジュールのラインアップだった。
同社の車載用パワー半導体モジュールは、Jシリーズとその派生モデルの「J1シリーズ」があったが、SiC-MOSFETの搭載を前提にRC-IGBTにも対応し、T-PMとケースタイプの融合も進めるという抜本的な設計変更を施すことなども含めて「J2シリーズ」をスキップし、満を持して投入したのがJ3シリーズになる。サンプル出荷開始が2024年3月なので、量産車に搭載されるのは早くても2026年以降になるとみられるが、今後の三菱電機がパワー半導体事業を成長させていく上で戦略的な製品になると言っていいだろう。
なお、三菱電機は「第38回 ネプコン ジャパン -エレクトロニクス 開発・実装展-(ネプコンジャパン2024)」(2024年1月24〜26日、東京ビッグサイト)に出展しており、J3シリーズをはじめ同社のパワー半導体モジュール製品の展示を行っている。J3シリーズの展示では、Jシリーズとのサイズ比較に加えて、J3-HEXA-Lを用いて同社 姫路製作所で試作したEV用のe-Axleも披露した。
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