三菱電機は、1500V以上の耐圧性能と、「世界最高レベル」(同社)の素子抵抗率となる1cm2当たり1.84mΩを両立するトレンチ型SiC-MOSFETを開発した。家電や産業用機器、自動車などに用いられるパワーエレクトロニクス機器の小型化や省エネ化に貢献する技術として、2021年度以降の実用化を目指す。
三菱電機は2019年9月30日、東京都内で会見を開き、1500V以上の耐圧性能と、「世界最高レベル」(同社)の素子抵抗率となる1cm2当たり1.84mΩを両立するトレンチ型SiC-MOSFETを開発したと発表した。家電や産業用機器、自動車などに用いられるパワーエレクトロニクス機器の小型化や省エネ化に貢献する技術として、2021年度以降の実用化を目指す。
SiC(シリコンカーバイド)デバイスは、Si(シリコン)をベースとするパワー半導体と比べて、小型・高パワー密度、低損失・高効率、高周波・高性能、高温動作などが可能な次世代パワー半導体として開発が進められている。既に、SiC-SBDなどのダイオードの他、Si-IGBTを代替可能なSiC-MOSFETも一部商品化されており、さまざまな機器への導入が広がっている。
現在、SiCデバイスの開発競争の中で注目を集めているのが、素子抵抗の低減が可能なトレンチ型SiC-MOSFETである。既に商品化されているSiC-MOSFETの多くは、ゲート電極をSiC基板上に配置するプレーナー型になっている。これに対してトレンチ型は、SiC基板上に作り込んだ溝(トレンチ)にゲート電極を配置する構造であり、プレーナー型と比べてトランジスタセル幅を狭められるので、素子抵抗を低減できることが知られている。
三菱電機 先端技術総合研究所 所長の田中博文氏は「当社のSiCデバイス開発の歴史はを25年に上り、さまざまな成果を得てきた。今回発表したトレンチ型SiC-MOSFETは、2013年から開発を重ねてきたもので、従来のプレーナー型と比べて素子抵抗率を半減することができた。また、トレンチ型の課題だった信頼性を高めるとともに、量産にも向く製造技術を採用した。満を持しての発表といえるだろう」と語る。
なお、ロームやインフィニオン(Infineon Technologies)は既にトレンチ型SiC-MOSFETを商品化している。これに対して三菱電機は、世界最高レベルの素子抵抗率や、高い信頼性、量産メリットなどの開発成果を提案することで、早期の採用につなげたい考えだ。
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