インフィニオンが第2世代のSiC-MOSFET製品の特徴や製品ラインアップについて説明。前世代と比べて5〜20%の損失削減が可能であり、競合他社の製品との比較でも圧倒的な優位性を発揮するという。製品ラインアップの拡充も図り、マレーシアのクリム工場への大規模投資などにより量産規模も拡大していく方針である。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2024年4月12日、東京都内で会見を開き、同年3月に発表した第2世代のSiC(シリコンカーバイド)-MOSFET製品「CoolSiC MOSFET Generation 2(G2)」の特徴や製品ラインアップについて説明した。前世代と比べて5〜20%の損失削減が可能であり、競合他社製品との比較でも圧倒的な優位性を発揮するという。さらに、産業グレードのディスクリートで前世代になかった耐圧400V品や高効率の冷却が可能なTSC(上面冷却)品を投入するなど製品ラインアップの拡充を図るとともに、マレーシアのクリム工場への大規模投資などにより量産規模も拡大していく方針である。
インフィニオン(Infineon Technologies)は2017年に、ゲート電極をSiC基板上の溝(トレンチ)に作り込んだトレンチ型SiC-MOSFET製品を発売しており、これが第1世代の「CoolSiC MOSFET Generation 1(G1)」に当たる。ドイツ本社 SiCディスクリート担当プロダクト マーケティング ディレクターのジョバンバティスタ・マッティウッシ(Giovanbattista Mattiussi)氏は「高効率のトレンチ型SiC-MOSFETはゲート酸化膜の信頼性に課題があるが、リスクを解決したのが第1世代品だ。第2世代品は、第1世代品の最大の特徴である高い信頼性を維持しつつ、コストを削減し、大幅に性能を高めた」と語る。
第1世代品における“高い信頼性”を示す数字になっているのが、出荷100万個当たりの欠陥数を示すdpm(defects per million)だ。何と、SiCデバイスよりも信頼性が高いとされるシリコンパワーデバイスよりもdpmが低いのだ。「シリコンパワーデバイスのdpmも極めて低い数字だが出荷数量も極めて多いこともあって一定の故障が発生している。SiCデバイスが出荷数量が少ないことを差し引いても、dpmが低いことは事実だ」(マッティウッシ氏)。
CoolSiC MOSFET G2は、トレンチ型SiC-MOSFETの微細化やゲート酸化膜の改良によって、スイッチング損失に関わるオン抵抗を1桁mΩ台まで低減しており、耐圧650V品で6.7mΩ、同1200V品で7.7mΩとなっている。このため、CoolSiC MOSFET G1と比べて、インバーターやDC-DCコンバーターなどに適用した場合の電力損失も大幅に低減できる。例えば、耐圧1200V品を用いた全負荷稼働時の比較では、一般的なハードスイッチングで10%、LLC回路を用いるソフトスイッチングで5%の損失削減を実現できる。また、軽負荷時であれば20%もの損失削減が可能になるという。
また、同社のディスクリート製品向け接合技術である「.XT」を改良してCoolSiC MOSFET G2のパッケージに採用した。熱抵抗の特性であるRth(j-c)を12%削減できており、より大きな電流や低い温度環境、スイッチング周波数での利用が可能になる。
新たなトレンチ型SiC-MOSFETチップとパッケージ技術の組み合わせにより、同じディスクリートパッケージを採用する競合他社のSiC-MOSFET製品と比較した場合の電力密度で優位性がある。例えば、D2PAK-7パッケージを採用する競合他社品と比較した場合、その電力密度は30%以上高いとする。
これらの他にも、ゲートソース間最大電圧を−10〜+23Vに拡大した他、Tvj(ジャンクション温度)=200℃までの過負荷動作とアバランシェ耐量、耐圧1200V品で2μsという短絡耐量も確保している。
インフィニオンでは、先に挙げた電力密度の比較以外にも競合他社製品との性能比較を行っている。耐圧1200V品の場合で4〜17%、耐圧650V品で13〜64%、電力損失が少ないという結果が得られている。「EV(電気自動車)向けの充電ステーションにおいて、CoolSiC MOSFET G1からCoolSiC MOSFET G2に置き換えた場合、自動車1億台に充電を行うと、毎年最大900GWhの省エネが可能になる。これは最大35万トンのCO2排出量削減に相当する」(マッティウッシ氏)という。
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