STマイクロエレクトロニクスは、「オートモーティブワールド2024」において、SiCデバイスの原材料からウエハー、モジュール、冷却系までを含めたシステムに至るまで垂直統合で手掛ける同社のソリューションを一堂に披露した。
STマイクロエレクトロニクス(以下、STマイクロ)は、「オートモーティブワールド2024」(2024年1月24〜26日、東京ビッグサイト)の「第16回[国際]カーエレクトロニクス技術展」において、SiC(シリコンカーバイド)デバイスの原材料からウエハー、モジュール、冷却系までを含めたシステムに至るまで垂直統合で手掛ける同社のソリューションを一堂に披露した。
次世代パワー半導体であるSiCデバイスは、EV(電気自動車)の市場拡大に合わせて、インバーターや車載充電器などの小型化と省電力化、ひいては走行距離の延長に貢献することから需要が急速に立ち上がりつつある。STマイクロのSiCデバイスは世界シェアトップであり、ヒュンダイをはじめ現在量産されているEVに広く採用されていることで知られている。
優位なポジションを築く中で、SiCデバイスに関わる生産体制の整備も急ピッチで進めている。それはSiCデバイス本体にとどまらず、SiCウエハーや、ウエハーを切り出す前のインゴッドの製造にも広がる一方で、ディスクリートのSiCデバイスで構成するパワーモジュールや、冷却系を含めたインバーターシステムの提案まで広がっている。「今回の展示は、当社がSiCソリューションを垂直統合で提供できることを示す狙いがある」(STマイクロの説明員)という。
展示では、SiCインゴッドの原料となる粉末材料から始まり、最新の8インチSiCウエハーについてバルクの状態とデバイス形成後の両方を展示し、その横にはベアダイやディスクリートパッケージ、「ACEPACK」のブランド名で展開する各種パワーモジュールを並べて披露した。2023年にイタリアのカターニャに立ち上げたSiCデバイスの製造拠点では、SiCのインゴッド、8インチウエハー、前工程でのウエハーへのデバイス形成、後工程でのパッケージ/モジュール化までが行えるようになっている。シンガポールのアン・モ・キョにもSiCデバイスの製造拠点がある他、後工程と試験の工場がモロッコのブスクラと中国の深センにある。また、2024年にはSiCウエハーの40%を内製化することを目指している。
今回の展示では、同社のSiCデバイスをはじめとするさまざまな技術の応用例としてEV向けのトラクションインバーターも展示した。SiCパワーモジュールと、フライバックコントローラー付き絶縁ゲートドライバ、制御用マイコン、パワーマネジメントICなどから構成されるとともに、両面放熱パッケージによる冷却系の採用により、350kW/l(リットル)に迫る電力密度を実現できる。「従来の構成だと200kW/lあたりが限界だったが、SiCに関連する技術を垂直統合で有し、アプリケーションエンジニアのレベルも高い当社だからこそ可能になったものだ」(同説明員)という。
なお、STマイクロはSiCデバイスだけでなく、同じく次世代パワー半導体として期待されているGaNデバイスの開発にも注力しており、フランスのトゥールに生産拠点もある。「GaNデバイスはSiCデバイスと特性が異なることもあり、車載向けでより適した提案ができるように開発を進めている。2025年以降には、興味深い事例をお見せできると思う」としている。
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